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グルッペンが空いた片手を翻すと、テーブルの上にふわりと薄茶けた紙が現れた。端の方は破れ、かなりの年代物だということが窺える。しかも見たこともないような字で文章が綴られている。
「契約書だ」
素っ気なく言い放つグルッペンとは反対に、
トントンの瞳はその紙切れに釘付けになった。その唇も嬉しそうに弧を描いているようにも見える。
「おまえを信用しているわけではない。だがおまえが最初に言ったことだ。それぐらいのこと、やれるだろう？」
グルッペンはあきらかに挑発と分かる言葉を発しながら、契約書に火をつけた。
ボッと音を立てて一瞬にして炎に包まれる。
「グルッペン……」
不安になって思わず隣の悪魔の服を掴む。
契約書を包んでいた炎は、燃えるものがなくなると炭だけを残して消えていった。そして目の前には、子どもの姿から解かれたトントンがいる。
トントンはしばらく黙ったままだったが、おもむろに立ちあがると自らの手を眺めて呟いた。
「ああ、やっと力が戻って来た」
グルッペンに封じられてどれほどもどかしい思いをしていたのか、最初こそ、くっと喉の奥で堪えるような笑みを漏らしていたが、次第にそれは哄笑となる。
「俺は自由や」
おさまった笑いと共に、トントンはグルッペンを見据えて告げる。
それはどこか上から見る者の視線で、Aはこのままトントンが約束を守らないかもしれない不安にかられる。
だが、トントンはしばらくグルッペンを見据えてから、ちらりと視線をAに移す。
「人間ごときのために俺ほど悪魔を手放そうとするあんたは愚かや」
その台詞から滲み出る感情はどこまでも蔑みだったが、Aには言葉の裏に寂しさが見え隠れしているように感じ、ある仮定を思いつく。
もしかしたら、トントンはグルッペンの側にいたいがためにあの提案を言ったのではないだろうか。それは、どれほどグルッペンに必要とされているかを計る一種の賭けのようなものだったのかもしれない。
価値ある存在だと思われていれば、提案を受け入れない。もしくは必要でなくなれば、提案を受け入れる筈だと。人間だって同じだ。誰かの役に立っていると思えたなら、自分の価値を見い出せるではないか。
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ヒイラギ - やばい､､､最初から最後まで一気に見てしまった､､､神作品すぎます！ (5月20日 21時) (
レス) @page25 id: 04238311ec (このIDを非表示/違反報告)
夢喰(プロフ) - めっちゃ好きです！更新頑張ってください！！ (2022年6月12日 11時) (レス) @page19 id: 5ee2b54502 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナツメ | 作成日時：2022年5月12日 17時
