【d!】かつては聖女、今は魔女 (ページ49)

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tn「それは？」

『ズヴェールの核。宝石みたいでしょう？大きな魔物じゃなければ、こんなに立派なのは見つからないでしょうけど』

Aはそれをトントンに手渡した。

『一応魔石だから、今の世の中では希少な品よ』

tn「……どうやって使うん？」

『あの禍々しいものからの戦勝品って思うと微妙かもしれないけど、それだけ強い力を持ってる石よ。ズヴェールの魔石は、炎の加護があるから、身に付けていれば多少の火の粉じゃ怪我しなくなるわ』

そういいながら、Aは自らの衣服の中からペンダントを取り出した。
それはズヴェールの赤いものとは違い、蒼い色をしたものだった

『これは魔物からのものじゃないけどね。かつて私の友人だった魔女が残したものよ』

tn「……魔女も、魔石を残すもんなんか？」

『ええ。これが、私達の力の源なのよね』

そう言いながらAはペンダントをしまった。

『捨てようと思うなら、数日間水に入れておくといいわ。すぐに消えはしないけど、火の加護は水に弱い。そのうちなくなるわ』

tn「なくす意味はあるん？」

『ええ。……やりようによっては、ズヴェールの性質を持った合成獣を作れなくもない、ことかしら。現在じゃただの宝石にしか見えないだろうし、技術もないと思うけど、そんな可能性は考えられるわね』

魔石は役立つと同時に危険なものである。
それを伝えても大丈夫だと思ったからこそ、Aはトントンに託したのだ。
トントンは短く息を飲んだが、「わかった」とだけ口にした。それで返事は十分だ。

『それより、あの二人だけど、治療はおえて……
あ、あれ？』

中途半端に言葉を途切れさせてしまったAは、そのまま地に膝をついた。
気持ちが悪い。足が揺れる。まずい、完全なオーバーワークだ。空っぽのはずの胃から何かがせりあがってくる感覚に思わず手で口を覆うも、嘔吐感は止まらない。
もしも実際に吐けたなら、それはそれで楽になれたのかもしれない。
しかしせり上がってくる何かは体を修復しようとする不死の能力が勝手に押しとどめようとして、とにかく暴れ続けている。

苦しい、苦しい、苦しい。

荒い息で、しかしなんとか落ち着こうと必死に地面にしがみついた。

トントンの声がどんどん遠くなるのを感じながら、Aの視界は徐々に黒く塗りつぶされた。