【d!】かつては聖女、今は魔女 (ページ48)

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(かばわれたのに怪我させた上に攻撃加えて、私、一体どんな暴れん坊よ!?)

これはあまりにひどいと、Aの表情は引きつった。
色々気付かなかったことにしたかったが、あまりに無理がある。

『…………ちょっと、待って』

そう言うとAは上着を口で引き裂き、細いリボンを一本作る。
そして無言でトントンの手をとり、そこに巻く。

『……』

包帯のつもりだった。だが、出来映えはひどいとしか言えないものだった。
トントンの包帯を失敗した前科があるにも関わらず、その後練習していなければ当然といえば当然の結果だ。

tn「…………」

これは、ほどいた方がいいのだろうか？
むしろ、これをどうすればいいのだろうか。

tn「今度、巻き方教えたるな」

『……で、できるならトントンがやってくれたらいいのよ！』

かける言葉にも困っただろうトントンに気を遣わせてしまった。
そう思うといたたまれない気持ちになりながら、Aはそっぽを向いた。
そうだ、できる人がやればいい。どうせ、自分には不要なことなのだから。

『…………』

tn「あのさ」

『……何？』

tn「ありがとう」

不格好なままの手当を直さないままに言うトントンに、Aの頬は熱くなった。
しかしそれは必死で誤魔化した。

『最後の最後で道連れにしようなんて、あのズヴェール、ホント最悪だったわね！』

そして顔が見られないように、ズヴェールがいた場所までまっすぐ進む。しかし、足が少し痺れていた。魔力不足を全身が叫んでいるからだろうか？それとも、ズヴェールの毒がまわっているからだろうか？いずれにしても、できるだけ早く休まなければいけないだろう。

しかしそれでも、せっかくトントンが討伐したズヴェールをそのまま放置していくわけにもいかない。

煤焼けた土から、Aは一つの灰を摘み上げた。
それからそれをコンコンと叩き、中から親指の爪ほどの、濃い赤の結晶を手にした。