【d!】かつては聖女、今は魔女 (ページ45)

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(倒せなかったけど、邪魔な尾はクリア、動きは鈍くなったはず)

逆に怒りで攻撃力が増す恐れもあるが、これで攻撃しやすくなったのなら、最低限の合格ラインは突破だろう。ズヴェールの標的もトントンからAに移っていた。

『おまたせ。あの二人は回復しはじめてる。このズヴェールを倒して岐路を確保すればもう平気よ』

tn「……残念やな、戻ってくるまでに倒しておくつもりやったんやけど。でも、懸念がなくなったのは、ほんまに助かる。ありがとう」

冗談とも本気ともつかない言葉に、Aは口角を上げた。

『おいしいところは任せるわ。狙ってね？』

そう言うなり、Aはズヴェールに向かって踏み込んだ。
いくつもの細かな、しかし途切れないズヴェールの口から吐きだされる炎の玉がAに襲いかかるが、Aもいくつもの氷の盾を出現させて凌いでいく。当たれば砕け、そして消えてしまうる使い捨ての状態だが、Aが移動しているのでそれで十分だった。

しかし、徐々にズヴェールの攻撃も激しさを増している。相手も集中をしだしたということか。

(でも、これでトントンはもっと狙いやすくなるはずね)

ただ、Aとて防戦一方のつもりはない。少しでもダメージを与えようと、同時に氷で矢を複数本精製し、それでズヴェールの首筋を狙った。だが、それは連続した炎の吐きだしによって阻止される。それでもAは再び氷の矢を放ってゆく。

(大きな氷柱ならあのくらいの炎も突破できそうなものだけど、大きな氷柱を作るほど残存魔力がないのよね)

しかし、そんなことを思ったのも一瞬だ。
連続した攻撃に激高したらしいズヴェールが大きく砲口しようとする姿を見て、目的は達成されたと理解した。

直後、ズヴェールの動きが完全に止まった。
それは一瞬だった。しかしその次の瞬間には声とはいえない声があたりを切り裂いた。

そこでAが見たのは、ズヴェールの喉元から剣を貫いているトントンの姿だ。
それは、まるで物語に出てくる勇者のような、挿し絵のひとこまのような、そんな風に感じてしまった。

だから、一瞬気づくのが遅れた。

うなっていたズヴェールが、倒れる直前にその瞳を光らせたことに。