【d!】かつては聖女、今は魔女 (ページ41)

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ズヴェールの炎はAがたった今築き上げた氷壁にぶつかり、消滅していた。
氷壁は一部を破壊されつつも、その被害を最小限とどめていた。

『間一発、かな』

冷や汗をかきながら、Aはズヴェールと睨み合った。
ズヴェールは、Aが想像していたより立派な姿で、できれば出会いたくなかったと思わざるを得ない。

ズヴェールも突然現れた氷壁に警戒をしてだろうか、一瞬その動きを止めた。その隙にAは注意を払いつつも後ろで倒れた軍人の様子をのぞき見、息をのんだ。

(想像以上に、ひどい……!!)

息をしていることが、いや、この状態で逃げていたという方が不思議なほどのひどい怪我を負っている。
このままだと、あとどのくらい持つか
＿＿＿＿すでに意識はほとんどない。

tn「コネシマ！大先生！しっかりしろ!！」

剣を抜き、それをズヴェールに向けるトントンが二人の名前を呼ぶも、二人はわずかな反応も示さない。呼吸が、すでに止まっている。

(ただ、まだ、死んではいないはず)

Aは唇をかんだ。
助ける方法はわかっている。けれど、それはトントンに危険な役目を押し付けることだ。
提案すれば、彼はそれを間違いなく引き受けるだろう。だが、そんなことは提案したくない。

(それでも……このまま、何もできなかったって、トントンを後悔させるのはイヤだ)

とりかえしのつかないことで、後悔なんてさせたくない。

(だって、私だって、嫌だもの!!)

『……トントン、２００を数える間だけ、時間かせいで。そうすれば、この二人は私が助ける』

tn「助けるって、」

『いいから！やる、やらない、どっち！』

トントンの常識では、この状況を治療できないということをAも理解している。
いや、ここまでの火傷をし、さらにズヴェールの毒に侵されていれば、砦に連れ帰っても危ないことは明白だ。

(だからこそ＿＿あなたの常識外の回復魔術を使うのよ!!)

本当なら人前で絶対に使いたくない力だ。
あとで誤魔化すことは考えているが、しかし今はそれを考える時間も、ましてや説明している時間などない。