【d!】かつては聖女、今は魔女 (ページ29)

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(彼がトントンの上官だろうと、私には関係ないもの)

そもそも、そんな細かなことよりも気になることができたのだ。

『上官って割には、フランクな感じなのね』

先程慣れたように上官の名前を呼び捨てたトントンに目を向ける。
しかしそんなことを口にしたAに、グルッペンも驚いていた。

gr「俺とトン氏は同郷なんだよ……なんや、お前は休みごとに通ってる女性に俺の話の１つもしなかったんか」

『通っ……!?』

なんてことをいうのだ！それでは大きな誤解を招く言い方になっているのではないか！そう思いつつもあまりの衝撃に言葉を詰まらせたAとは対照的に、トントンはひどく冷静だった。

tn「いや、なんでグルさんのこと丁寧に説明する必要があんねん。それに上官がいる、くらいには言ったで」

思い起こせば、確かに言っていた……ような気はしている。
まぁでもこの状況において、その話はそんなに重要じゃない。
そんなこと思っているうちに、一瞬焦った心は落ち着いてきた。

gr「まぁ、お嬢さん。トン氏が言うことは俺にも理解できるぞ。お嬢さんは魔女でも部外者だ。ここには表に出したくない情報も多い」

『……それもそうね』

gr「だから」

その言葉とグルッペンの行動は、どちらのほうが早かっただろうか。
ほとんど予備動作なく剣が振り下ろされるのを、Aは飛び退きながらも目視した。彼女がいたところからは鈍い音が響いた。

gr「凄腕だと思わされる人間以外は、つれていけないんだよなぁ、これが」

『ずいぶん物騒な挨拶ですね』

gr「鞘(さや)のままだ、最悪骨が折れるくらいだろう？」

なんという荒々しさだ、これでは騎士というより山賊ではないか。