【d!】かつては聖女、今は魔女 (ページ25)

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(……こんな道、トントンは来てたんだ)

『見たことある』と、『行ってみる』では大きく違うなと、改めてAは気が付いた。遠いとは知っていたけれど、どれほど遠いかは理解していなかった。

城壁が見えたところで、Aはゆっくりと森に降りた。
そしてそこから街道に向かい、まっすぐと城門へ向かおうとして、ふと気が付いた。

『人が、少なすぎる気がする』

砦は大きな城塞なのだから、少しくらい人の行き来があってもいいはずだ。
だが、Aの周囲には荷馬車どころか人っ子一人見当たらない。何か起こっているのだろうか。

そう、Aが首を傾げた時、遠くから馬の足音が耳に近づいてきた。
思わずAが振り向くと、そこにはもう見慣れた青鹿毛の馬、ラーピドと＿＿

tn「どうしてここにおるん……!?」

『……トントン、その格好……なに？』

いつもとは違い、まるで立派に働いている人のようだった。
いや、いつもだって清潔感のある服を選んでいるのはわかっていた。が、まるで軍人だ。

『いや、トントンは軍人なのは知ってるんだけど』

tn「話はあとや。ここは危ない、はよ城門の中へ」

『危険なの？』

普通の街道のどこが危険なのか。そう首を傾げているうちに、気づけば馬上に引っ張り上げられていた。
そして、気づけば城門を抜け、更には街を抜け、それから＿＿

『ここ、どこ？』

tn「……」

気づけば明らかに軍事施設……もとい砦に入り、ラーピドから降り、そのまま引っ張られるようにして入ったのはそれなりに上等そうな、けれど年期が入ったソファがある部屋だった。しかし古そうといえども、座り心地はなかなか良かった。

tn「一応、相談室」

『入ってよかったの？』

tn「一般市民の相談聞く部屋だからかまへん」

なるほど、だからソファも新調は難しいのか。予算も厳しいのかもしれないな……などと考え始めたAは、しかし途中で『ちがうちがう、今の問題そこじゃない』と自分に突っ込みを入れた。
そして、まだトントンからの「どうしてここにおるんや」という問いにも答えていない。