１３ 暖かいご飯とお客様 ページ14
◇
「やっぱり人として、礼を欠くのはどうかと思ってん」
そう言いきった青年に、Aは大きく肩を落とした。
『人の意見を尊重しようと思わなかったの？』
「それに関しては申し訳ないと思っとるよ」
『……。謝るなら来ないでよ』
なんで来たの、と、睨むAに、青年は申し訳なさそうに目尻を下げた。
「いや、むしろ本当ならもっと早く来たかってん」
『……あのね、話、聞いてる？』
「でも、どうしても着任したばかりの砦で、グルッペ…上官に休暇は申し出にくくて＿＿ようやく休日とれたんよ」
『砦の上官＿＿＿って、あなた軍人なの!?』
おそらく砦というのは、ここからは一番近い街である、砦の街のことだろう。
このあたりは首都と比べればド田舎といっても差し支えない地域ではあるが、一応国境沿いということもあり、それなりの街も存在している。ただし街はひとつだけで、あとはほとんど村であるのだけれど。
しかし、そんな中でもAの頭の中には疑問が浮かび上がった。
(軍人ってこんなに空気が緩かったっけ!?)
平和な時代の空気かもしれないが、Aの記憶の中の軍人とは大きく異なっている気がしている。
そして、同時に思う。
どうして、この青年を助けてしまったんだろう、と。
時間を巻き戻したとしても再び助けてしまうのは目に見えているが、ならばどうしてあの場に通りかかったのかと自分を問い詰めたくなってしまう。
せめて、この青年が話を聞いてくれる人ならば――再び目の前に現れるようなことがなければ、そんなことも思わなかったのだろうけど。
「そういえば、まだ名乗ってなかったな。俺はトントン＿＿」
『聞いてないんだけど』
言葉を中断させられた青年ことトントンは目を見開いたが、すぐに苦笑した。
「で、これがお礼の品や」
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作者名：ナツメ | 作成日時：2022年2月9日 21時
