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自分の気持ちを取るか、相手の気持ちを取るか ページ39

雨の音が鼓膜を震わす

「チッ…何やってんだ…俺ぁ」

Aと総悟を残して部屋に戻った俺は、珍しく感傷に浸っていた

クソ……らしくねぇ…

Aといる時には吸う事もない一服を味わいながら先程までの出来事を反芻する

あのままAとここまで来ちまやぁよかったか…


『私は皆が任務に集中できるように』


『総悟さんに大丈夫な所を見せたかった』


『私だって…私だって大事ですよ…

当たり前じゃないですか……命の…恩人なんだから…

私を…あの真っ暗闇から救ってくれた…張本人…なんだから』


Aの、話をしている時のあの泣き顔

Aの紡ぎ出す言葉からは、総悟に対する思いが嫌と言うほど伝わってきた

「ホントアイツ総悟のこと大好きだよな…

ま、自覚はねぇんだろーけど」

そして、総悟が出てきた時のあの表情…そしてオーラ……

正直あの時の総悟の目には鳥肌が立った

べ、別にビビってたわけじゃねぇぞ!

断じてそれは違ェ!


1人で勝手に言い訳をしながら頭を振る

それと一緒にタバコの煙がグニャグニャと曲がったまま残っていた

まるで今の心情を表すかのように…

「ハァ……」

今日何度目かになるかも分からないため息を吐き出す


俺の事は眼中にないってか?チクショー…

部下であり、約10も年の離れたアイツに嫉妬する事になるたぁなぁ……

「ハッ…俺も落ちぶれたもんだぜ」


『私は土方さんのことも大切に思ってますよ』


「『も』…ねぇ……」

まぁ俺ぁいつまで経ってもその「も」で括られるんだろうよ…


フゥーと吐き出したタバコの煙は、そんな言葉と思いと一緒にすぐに部屋の空気の中へと溶けていった


『土方さん!』


ふいにAの額に口付けた時のあの声と表情が蘇ってきた

総悟がいるのが見えて実行したアレだったが、結果オーライだったよな…俺的にだが……

まぁ、総悟にAを渡すことにはなったけれども…

でもあの表情を総悟より先に見たのは、俺だ

こう思うしか総悟に対抗できないのは癪だったが、まぁ今はそれでいい


『いつも助けてくれてありがとうございます』


Aが感謝の気持ちを直接俺に伝えてくれる間は

Aが俺の行動で顔を赤く染めてくれる間は…


アイツには渡したくねぇ


フゥーと吐き出したタバコの煙は、消えることなく目の前を白く覆った

その煙が何故か強く目にしみた

Sって感染性でした→←猿芝居は程々に。…いや、アレ結構本気だったよ?……え?



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作者名:*kuro* | 作成日時:2019年6月9日 23時

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