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拝啓、神様へ ページ28

「神様にお願い事をするとその願いを叶えてくれるんだよ」

そんな事を物心着く前に聞いた事がある気がする

誰から聞いたのかなんて覚えていない

でもその言葉がふと頭の中に流れて来た


神様……か…


じゃあ、叶えてみてよ、神様とやら。

叶えられる物なら。

私は願う



本当のお母さんとお父さんに会わせて。



「オラ起きろよ」ガッ

私は我に返る

目を開ければそこにいると思った

やっぱり嘘だ

神様でもできっこない

神様なんかがしてくれる訳ない

神様なんか信じない、嫌いだ


いくら親に会いたいと願っても目を開けたら待ち受けるのはコイツらじゃないか


それでも私は信じたい

神様に見放されたって神様なんかいなくたって…


「何を思い描いてるか知らないけどね、アンタの親なんかもういないのよ。知ってる?アンタの存在は生まれた時からないのよ。役所に登録もしてなかったの」


私は………


「アンタの写真だって一枚もなかった。燃やしでもしたんじゃないの、アンタの親が。」


信じて……


「それに親なら助けに来るでしょ、娘がこんなになってるってのにさ。生きてたとしてもとんだろくでなしだね」


………


「もういい、やめろ」

男が女に黙るよう指示した

女に向ける目も、私に向ける目となんら変わらなかった

チリーン

不意に鳴りを潜めていたあの鈴音が鳴った

ぼやける視界に何かキラリと光る物が見えた


鈴音とこの光

間違いない


「もういい、お前は。




俺が、切る」


刀だった


切られる


私がそう覚悟して目を閉じた時


「いや、待って。コイツはこっから出てってもらう。どうせならふんだくれる物はふんだくっておきたいじゃない?」


どういう意味だ

明日ここから解放されるって事?

それは願ったりかなったりだが……

一体どういうつもりだ


「フン、好きにしろ。サツには見つかるなよ」

「分かってるわよ」

男は再び鈴音と共に刀を鞘へ収めてそのまま女と部屋を出て行った


離れて行く鈴の音は、やはり濁っていた


が、私の願いは濁らなかった

逆にどんどんその思いは募るばかりだ

アイツラの言う事なんて信じない

私の親はそんな人間じゃない

会いたい会いたい会いたい

もしかすると明日から自由になれるかもしれない

親を探す事が出来るようになるかもしれない

そう考えると気が楽になった





痛い





もうそう感じる事もなかった

またね______……→←今も覚えてる



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作者名:*kuro* | 作成日時:2019年6月9日 23時

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