繋がる糸 Part.2 (ページ27)

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今も覚えてるページ27

ﾁﾘｰﾝ…ﾁﾘｰﾝ……

あぁ、きた

Aのいる部屋へ高い音と低い音二つの鈴の音が近づいてくる

その音は酷く澄んでいて、そして酷く濁っていた

Aにはそう聞こえた

澄んだ音をしているが、そんな音はこの二人には似合わない

これから起こる事の予測が既に付いているAにとって、そう思うのは仕方のない事だった

これがAの生活だ

いや、生活とは言えないのかもしれない

なぜなら……

ｶﾞﾁｬ……

｢よく眠れたか、A｣

部屋へと入ってきた男女のうち、男の方がAへ言う

しかしそれは眠りを労るような様子は一切感じられなかった

｢………｣

Aは声を発さない

眠れる訳ないでしょ。心の中で悪態をつきながら

｢相変わらず気に食わないね。せっかく親にも捨てられるような汚れた疫病娘を引き取ってやったってのに。ねぇ、あんた?｣

今度は女の方が発言した

この二人は親のいないAを引き取った所謂里親である

まぁ、Aはそんな風には一切思っていないのだが

ﾄﾞｶﾞｯ

｢っ……｣

男が無言でAの腹に蹴りを入れる

その目はこの世の物とは思えない程に冷たくAに突き刺さった

まだ癒えていない傷にその衝撃は重く響く

だがAは

また始まるのか

無表情にそんな事を思った

痛いとか辛いとかそういう事は一切頭の中には存在しない

ただただこの暴力に塗れた時間が一秒でも早く過ぎてくれるのを待つだけだった

それには理由があった

Aがそんな日々でも壊れず我を保てている理由が

…お母さん、お父さん……

Aはいつもそれだけを考える

意識の狭間を罵声と暴力と共に彷徨いながら、それらから逃げるようにただただ本当の両親の事だけを考えそちらだけに意識を預ける

たったそれだけだった

会った事もない

今実在しているのかもわからない

それでも、もう物心着いた頃から何年間も続くこの地獄の日々の支えになっているのは、そんなたった二人の人間だった

｢…ｹﾎｯ…か…さ……と…さ……｣

もう意識が半分飛んでいる中、無意識に口から出てきた

いつもは口を縛られているがそれが今日はなかったためだ

二人は容赦なくAに攻撃する中、ふとその言葉で止めた

そして、その代わりにAへと嘲笑を浮かべながらこう捨て吐いた

｢そんなもんとっくの昔に

俺らが殺したよ｣

そこで意識を手放した

痛い。

そう思ったのを、その痛みを今でも覚えている