泣き虫を泣かせる方法について ページ24
沈黙が流れた
しかしその沈黙を破ったのは、意外にもAだった
「……こんな事ではさすがの私も泣きませんよ」
結局出てきたのは、答えにもならないような普通の事だった
しかし、そんな普通の答えなのに、銀時さんの眉間の皺は更に深まる
どうしてそんな事が気になるんだろう
私の頭の中はただそれだけだった
「おめェさんはいつもそうでィ」
しかし、私の答えに言葉を続けたのは、問いを投げかけた銀時さんではなく、なぜか今まで黙っていた総悟さんだった
総悟さんの方を見た
でも総悟さんはこっちを見てはいなかった
まるで昔を思い出すような懐かしむようなそんな横顔
私の腰に回されている銀時さんの腕に、なぜだか力が籠る
でもそれより今は、総悟さんの言葉の先が知りたい
「おめェは…Aは…会った時からずっと泣き虫だった。俺が初めてAの泣いたとこを見たのは、誘拐事件の時。俺達に迷惑かけてごめんなさいって泣いてた。次は晩飯ン時。やっぱり俺達に謝った。旦那と一緒に、Aの泣き虫治さねェとなって言ってAのことおちょくったりもした。やっぱりAいじめンのは楽しいなって思った」
「そんな事思ってたんですか…!」
私は堪らず言った
総悟さんは一旦そこで言葉を切る
そして、いつものドSさは微塵も感じられない顔を私に向けたんだ
まるで銀時さんと同じ気持ちなんだとでも言うような……
銀時さんと同じ辛そうな苦しそうな顔を…
そしてそのまま、今度は私の顔を見て続けた
「……けど!けどAは泣き虫のくせに、ここってとこでは全然泣かねェ!俺が初めてAに話しかけて捨てられたんだって答えた時も!ファミレスで苦しそうな顔をしてた時も!…そして今も!自分の事には全然泣かねェ!いつも誰かの事で泣いてる!自分の時は苦しそうな顔するだけで涙は出さねェ!気づいてやしたかィ?」
初めて見る総悟さんの姿に、私は瞬き1つできなかった
「俺ァ…俺ァ言いやしたよね…Aの笑ってる顔が好きなんだって。Aの泣いた顔も苦しそうな顔も見たくねンですよ。けど、自分のために泣けないで苦しそうな顔をするA見るくれェなら、俺は、まだ泣いてる方がいい。泣き虫なAがいい。俺がいつだって、土方よりも旦那よりも早く駆けつけてAの泣いた顔を笑顔に変えてやりまさァ
だから……
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だから泣き虫なんか治さなくていい
おめェのために…俺のために…
今は泣けよ」
道を進めていない私の足の隣に誰かの足が見えた→←ねえ、そのとき私はどんな顔をしていたの?
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作者名:*kuro* | 作成日時:2019年6月9日 23時