ねえ、そのとき私はどんな顔をしていたの? ページ23
私の……目…
いつしか、Aの視界に入っているのは自身の膝と畳だけだった
本当は気づいてたんだ
気づかないフリをしていた
信じたくなかった
私が1番キライナモノ
今まで何度も何度も憎んできた
何度も何度もアイツらに……
土「おい大丈夫か、A?」
ハッとして顔を上げる
皆の心配そうな目が向けられていた
何か、何か喋らないと……
「……あ…大丈夫ですよ!す、少し食べすぎちゃったみたいです!あ、運動代わりにお皿洗ってきますね!」
上手く笑えていただろうか
日頃の表情の乏しさがまた仇になっていたかもしれない
何も悟られないように俯きがちに立ち上がる
そして逃げるように、料理が乗っていた時より重たく感じるお皿を持って立ち去り……
銀「ちょっと待てよA」
「え……わ…!」
立ち去れなかった
銀時さんに腕を引かれお皿が手から落ち、ガシャッと音を立てた
その音が嫌に部屋に響いた
そして気づけば、目の前には銀時さんの着物
服越しからも分かる意外としっかりした銀時さんの体格に、少し驚く
「……な…なにするんですか!離し…」
「そんな顔したお前をほっとける訳ねーだろ
…行かせねーよ」
先程までの気の抜けた声からは想像も出来ないような真剣な声音でそう言われ、身体がピクッと揺れる
表情は見せてなかったのに…
やっぱりこの人達には、敵わないな…
私の表情からここまで気待ちを読み取れた人間は、この人達が初めてかもしれない
私は銀時さんの方に顔を向けた
苦しそうな表情の銀時さんの顔がそこにはあった
なんで……
なんで私なんかのためにそんな苦しそうな顔をするの…?
なんでそんな労りの篭もった目で私を見つめるの…?
なんで…………
私のそんな問いかけは、1文字も声になる事はなく心の中で静かに溶けていった
その代わりに問いかけてきたのは、目の前にいるあなただった
·
·
「なんで……なんで今は…いつもみたく…泣かねーんだよ」
それは、問いかけと言うにはあまりに重苦しく、
そして、Aにとっては拍子抜けする程の他愛ない内容だった
それでも、銀時から出る悲痛さと、それに耐えるような苦々しげな表情に圧倒され、Aは身じろぎ1つすることもかなわなかった
ただ、銀時を見つめる事しかできなかった
その時のAの表情は、銀時しか、知らない
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ちょっとシリアス入ってきちゃいました
すみませんがお付き合い下さいませ(⁎-௰-⁎)
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作者名:*kuro* | 作成日時:2019年6月9日 23時