あのね9 ページ11
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「次の方、どうぞー」
看護師さんの声に、私は「診察室」とかかれたドアを開け中に入った
「こんにち………おや、Aさん」
「……どうも、ごめんなさい。お仕事中なのに」
そう、今日私は妊娠のことを相談しに神宮寺さんのところに来ていた。気まずいながらも、神宮寺さんの驚いた声にペコリと頭を下げる
「……何か、話したいことがあるんだね?まぁ、まずはそこに座りなさい」
神宮寺さんが示した椅子に腰をかける。まるで何でもお見通しかのような先生の瞳に、真っ直ぐと射貫かれた
「先生…………私…………」
肝心なところで、言葉が詰まってしまう。それでも「ゆっくりでいいから」なんて言う先生に、ゆっくり深呼吸をして、言葉を紡いだ
「……………………………私、妊娠してたみたいです」
声が、自分が思っている以上に震えていた。どれくらい自分が妊娠のことについて不安を背負っていたのか、自分自身で初めて分かった気がした。
先生は、またあの神父のような微笑みを浮かべた。
「そうか、おめでとう。Aさん」
「おめで……とう?」
「ああ、おめでとう」
先生の綺麗なアメジストをみつめる。「おめでとう」、か。そういえば産婦人科でも言われたっけ…
前々から疑問に思っていた。妊娠っておめでたいことなんだろうか?少なくとも、私の親はそう思ってはいなかったみたい。今もときどき夢に見るあの冷たい目………あれが何よりの証拠だ
「先生……妊娠っておめでたいことなんでしょうか」
問いをぶつけてみる。すると先生は驚きの色を瞳に滲ませ首をかしげてみせた。おい三十五歳、なんだその可愛い仕草は
「……逆に、Aさんはどうして幸せなことではないと思うんだい」
………私の過去は、独歩にしか話したことがない。痛いところを突かれた私は、床を見つめた
「………私、親に愛されなかったんです。毎日毎日暴力をふるわれていて、でもそれは自分のせいだと思い込んでいました」
愚かでした。私の親も、私も____
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ゆの@ヒプマイ - amroさん» 応援のお言葉ほんと嬉しいです!拙いながらも小説の世界に読者さんを引きずり込めたみたいでよかった……。最後まで読んでくださり、ありがとうございました! (2019年1月13日 14時) (レス) id: 6eb8088052 (このIDを非表示/違反報告)
ゆの@ヒプマイ - 新田(仮)さん» うわぁ〜!もったいないお言葉ありがとうございます!!私も書いていて美味しかった……笑笑。最後まで読んでくださり、ありがとうございました! (2019年1月13日 14時) (レス) id: 6eb8088052 (このIDを非表示/違反報告)
ゆの@ヒプマイ - めぐみんさん» 終わり方自信なかったので、そんな風に言っていただけて光栄の極みです!最後まで読んでくださりありがとうございましたm(_ _)m (2019年1月13日 14時) (レス) id: 6eb8088052 (このIDを非表示/違反報告)
amro(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。小説最後まで読みました。独歩と主ちゃんの関係が最高で中々素直になれない2人を無意識に応援しながら読んでました。これからも応援しています。 (2019年1月13日 11時) (レス) id: 18748080be (このIDを非表示/違反報告)
新田(仮) - んんんんんん()ラストめちゃよかったです…… 夢主たそのお母さんとの関係とか、夢主たそとどっぽっぽの不器用なかんじとか……めちゃ美味しかったですありがとうございました() お疲れ様でしたァァァァッッ(´ω`*) (2019年1月13日 8時) (レス) id: c6b51169dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆの@ヒプマイ | 作成日時:2018年12月8日 13時