高校最後の。【地縛少年花子くん】

18時間目 ページ20

制服の袖の長さが切り替わる時期

私はまだ、理科準備室に通っていた。



「せんせ……ちょっと…暑いです」



熱気が籠った部屋の中は、私をくたばらせるには十分だ。

まだ夏に近づいてきただけなのに

頬に一筋、汗が流れる。



「我慢してよ。ココにはエアコンなんていう便利器具はナイから」



棚の整理をしながら答える先生。

てきぱき動いているけど、どこか涼しげな先生に

少し頬を膨らませてみた。



「あー、暑いからやる気でない」



頬杖をついて先生の背中を見つめる。

先生は、全然進んでないもんねと私に背を向けたまま言った。


…こっち見てよ。


振り返らせる為に色々声を書けてみるが、効果なし。

諦めて先生から目線を外し、目を瞑る。

それと同時に先生が動く音がした。



「そんなハスミに、コレあげる」



少し間が空いてから、先生の声が聞こえた。

ゆっくり目を開ける。



「これって…」

「お守りだよ」



目の前にあったのは、『学業』と書かれたお守り。

淡いピンクの花柄で、いかにも女の子って感じ。



「え…、これ私にくれるんですか？」



あげるって言ってたけど、一応聞いてみる。

先生を見つめると、やっと目が合って頷いてくれた。

だから、お礼を言って可愛らしいお守りを手に取る。



「ドーナツのお返しだよ」



そう言って柔らかく笑う先生に、私も笑顔を返した。

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