あなたに会えたから８ (ページ19)

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バッグからハンカチを出して口を拭くけど……

違和感しかなくて…

ずっとハンカチで拭い続ける。

気を抜いてしまった事が悔しくて…

唇を噛んで……

強く噛みすぎて血が滲んだのか、血の味がする……。

スマホを取り出して見ても、涼太さんへのメッセージは、まだ既読になっていなくて、

電車を降りて歩きながら電話もしてみたけど、コールされるだけで、通話にならない。

こんな風に、連絡が付かないまま急に来るのは初めての事で……

カフェでの事も、急に来てしまった事も

考え始めたら不安でしかない……。

涼太さんのマンションに着き、自分の部屋の鍵と一緒につけてる涼太さんの部屋の鍵を手にしたら……

急に涙が込み上げてきて………

その場で泣き崩れそうになるのを必死でこらえて部屋に入る。

入ってすぐ、手に握ってたスマホがバイブして、名前も確認せずにタップした。

「もしもし？A？」

ずっと待ってた、愛しい人の声……

「ごめん！全然連絡できなくて！

やっと仕事終わってさ……今から帰るね？

もうこっち着いてる？」

優しく話す涼太さんの声を聞いたら、もう我慢できなくて……

『涼太さん……、……会いたい…………』

ずっと我慢してた言葉が出てしまった。

涙もどんどん溢れて止まらなくて……

「A………すぐ帰るから…」

泣いてる事には触れず、それだけ言うと、

「ちょっと急ぎでお願いします」

って頼んでる声が聞こえる。

「30分はかからないと思うけど………

待てる？」

『ん……』

なんとか返事をすると、

「一回切るけど……ホントに大丈夫？」

って……。

『待ってる』

って言うと、

「ん……。

あ、もう、俺の部屋だよね？」

って確認されたから、うんってまた返事したら、

少し安心したみたいに息を吐いた。