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店の電話が鳴って、フロアにいた山口くんが電話を取る。
「お電話ありがとうございます……カフェ…
あぁ……マスター？
え？
あぁ……ハイ、大丈夫で〜す。お疲れさまです！」
そう言って電話を切って、
「マスター、混んでて遅くなるから、客が帰ったら閉めていいって！」
そう言って笑って、
「俺、店閉めまでしたことあるんで、閉めますね？」
って言ってくれて、先に上がらせてくれる。
エプロンをとって、カウンター裏の棚に置いて振り返ると、すぐ後ろに山口くんが立ってて……
驚いてビクってしたら、
「あれ？俺の事……意識してます？」
ってクスクス笑う。
『意識？……してないよ……
近いから、離れてね？』
って、距離を取ろうとしたけど、
「俺を彼氏にしてくれるなら、離れようかなぁ〜？」
って…
いやいや……ありえない…。
呆れながら離れると、腕を掴まれて引き寄せられた。
「俺じゃダメ？」
『まだ、一週間くらいだよ？一緒に働いて……
それでこんな事言われても……』
「人を好きになるのに、日数なんて関係なくない？」
いつの間にか敬語も消えて、どんどん近寄ってくる…。
すごいな……
こんなにドキドキしないものなんだ………。
涼太さんが相手なら、この距離なら今頃、心臓発作状態なはず……。
思わず笑ってしまったら、苛つかせてしまったみたいで…………
壁ドンされて、いきなりキスされた。
え……
唇を奪われたのが、なんかすごく悔しくて悲しくて
……
固まってしまったら、
「そんな呆然とするくらい良かった？」
って、また顔を抑えられてキスをされ、舌が入って来た……
ヤダ、無理……
思い切り力を込めて抵抗したけど、なかなか離れてくれなくて、
思い切り足を踏みつけて、ようやく離れた。
「痛った……踏まないでよ……。お気に入りのスニーカーなのに」
って笑うけど……
『いい加減にしてください！』
そう言って、バッグを持ってカフェを飛び出した。
アパートを通り過ぎて、駅まで走る。
自販機で買った水を持ってトイレに駆け込み、何度もうがいをしてから、電車に飛び乗った……。
気持ち悪い……
好きでもない人とのキスって……こんなに気持ち悪いんだ…。
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作者名：ひな | 作成日時：2022年6月1日 14時
