君を忘れるために【紫】

彼女が消えた　紫side ページ1

辰哉くん、ごめんね？
そう言って目の前で微笑んで、
連絡が取れなくなったあのひと。
必死に追いかけて、手に入れて、また逃げられて。
そうやって、やっと………

腕の中に捕まえたと思っていたのに。


「リアコとかモテるとか……
全部後からついてきただけなんだよなぁ」
呟いて、カウンターに伏せる。

行きつけのバー。
ここで出会って、ここで話せるようになって、
そして逃げられて。

いつでも彼女は余裕たっぷりだったけど。
俺は必死なのを隠そうとして、
格好悪くて、
でも真剣だった。

「お客様、飲み過ぎじゃありませんか」
「まぁ、そんなにお酒強いっていうわけでもないしね」
「お客様はお酒におぼれるタイプでは
　ないかと思われますので、
　まだお飲みになられたいのであれば
　ご用意いたしますが……」

優しくは言ってくれてるけど、
飲み過ぎだってことだろうな。

「なぁにがダメだったんだろう」
辰哉くんがダメってことはないよ、って
悲しそうな顔で彼女なら言うんだろう。


「また飲んでんの？」


そう言って隣に座ってくるのは、見慣れた顔。
「だってさー」
「まぁ、運命ならまたどこかで会えるんじゃない？」
そう言って笑う親友は、
彼女のことも俺のことも、
きっとよく分かってくれているから。
時間に解決を任せるしかないのかなと思った。

親友は確信犯→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す