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感情 ページ4

妓楼に着いて、2階の座敷へ案内した。
2人きりで向かい合って他愛もない話をする。

2人きりとはいうが、もちろん(ふすま)の傍には下男がいる。大金が払えないために、初回だというのに手を出そうとする人がいるからだ。



天元「…」



しばらく話した後、会話が途切れた。




A「……人払いをしんしょうか」

天元「、!!………頼む」






きっとこの人は傍に人がいることに気づいている。
何事も無いかのように振舞ってはいたが、一瞬だけ襖の方へ目を向けていた。
それに妓楼に入り移動している間も聞き耳を立てるような仕草を何度もしていた。



普通の人間なら気づかない程度ではあったが。



何か事情があるのだろう。




スっと立ち上がり、襖の方へ歩いた。ゆっくりと襖を開けて下男に話しかける。




A「…そこの、人払いをおがみいす。」

下男「ですが……。…もしかして間夫(まぶ)ですか?」

A「間夫など連れ込みんせん。」

下男「…間夫であれば余計離れられません。」

A「わっちのことを知っていんしょう。間夫を連れ込むようなとんちきではありんせん。てんとう足抜けもしんせん。(ぬし)さんに都合があるだけでありんす。さあ、下がって。何ならおかさんに許可でも取ってきんさい。」

下男「………分かりました。」







この店のお職である私は大概の融通が効く。
上手く信用もされるように動いてきたおかげで、怪しまれることもほとんど無いのだ。


それにこの客は信用できる。


悪意が全く感じられないからだ。




私は6つの頃からここに居る。ここは騙し騙されの世界だ。少しミスをして河岸見世(かしみせ)にでも送られれば、梅毒による死が待っている。

お客にもルール破りの人がいる。
それに気付くためにも人の汗・瞳孔・瞬きにまで気を配り、感情を読まなければならない。







その為、気づきたくもないことに気付くようになった。まず人を疑ってかかる私は、もう遊郭の闇にどっぷりと浸かっているのだろう。









この鳥籠の中にいる間は、気が休まる時間など無いのだ。









┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


間夫・・・彼氏のこと。

足抜け・・・遊郭から逃げ出ること。バレれば大変な事になる。

河岸見世・・・最下層の女郎屋。安い金で客を取る。衛生面も悪い。

梅毒・・・この頃遊女がよくかかっていた性病。かかれば死が待っている。

てんとう・・・神に誓って

事情→←花魁道中



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設定タグ:鬼滅の刃 , 宇髄天元 , 花魁
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ジュナ(プロフ) - このお話とても好きです。遊郭での専門用語や花魁の話し方、解説もわかりやすくて、勉強になります。私もいつか遊郭でのお話を書いてみたいと思っておりますので、参考させて頂ければと思っております。次の更新心からお待ちしております。 (2020年12月9日 18時) (レス) id: cf5b081365 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:hinata | 作成日時:2020年4月12日 22時

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