溶けそう【山田一郎】

溶けそう３８ ページ39

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「あれ、俺のこと知ってたんだ。」


こいつなんだ急に、話しかけてきやがって。企みでもあんのか？


「まあ、Aから話は聞いてるからな。で？要件はなんだ？」


「怖いな〜、俺一応君より歳上なんだけど？」


だから何だよ、関係ねーだろ。何しに来たんだこいつ。


「正直に言うけど、君の彼女、Aには才能がある。でもその才能を閉じ込めているのは君なんだよ。」


は？こいつ今なんつった？Aの才能を閉じ込めているのは俺？


「君って独占欲強いよね、だからAはやりたいことをやりたいと言えないんだ。例えば、留学したいとかね。」


《留学》

その言葉を聞いて俺は頭が真っ白になりそうだった。留学？ヨーロッパに？Aはそんなこと思ってたのか？
俺がAを邪魔してる？Aはそんな素振り1回も………


「彼女が君に言うわけないだろ。Aだって君のことが好きだから、言いたいことを言えないことだってある。だから正直君達別れた方がいい。君の熱狂的なファンがAを傷付けるかもしれないし、なにより君と一緒にいたらAがやりいことが出来ないだろう？」



「…………言いたいことはそれだけか？」



「あぁ、あともうひとつ。Aには俺と一緒にウィーンに来ないかと伝えてある。じゃ、健闘を祈ってるよ。山田一郎くん。」


ふざけんじゃねぇ。好き勝手言いやがって、Aのこと何も知らないくせに。
…でも、Aを離したくない、どこにもいかせたくないという気持ちはAにとって重荷なのかも、しれないよな。




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