溶けそう【山田一郎】

溶けそう２ ページ3

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西口公園に行く

うん、今日も人が多いな


一郎くんがメディアに出始めてからファンがすごく増えた気がする。私からしてみても本当に嬉しいことで。

バスブロの魅力が全国民に伝わって欲しいぐらいなのだ。



「そろそろ始まるよっ」


「やばい楽しみ！今日も一郎ビートボックスするのかな！」


「三郎くんと二郎くん、また喧嘩してるっぽいね」


などなどの声が聞こえてくる。

一郎くんのビートボックスが西口公園に流れる

みんなザワザワしていたのが、掛け声に変わる。

一郎くんは一瞬でこの大勢の人を一体化させるすごい人なのだ。



今日は幸運にも一番前に居る。一番前で一郎くんを見れる。



「say Hoo！！！」


『Hoo！！』


この瞬間が1番楽しい。ラップが楽しいってことを一郎くんは私達に教えてくれる、本当に大好きだ。



サイファーが終わる。たった数分間だけど本当に幸せだった。



「一郎〜！今日もかっこよかったよ！」


「アザっす！今日も来てくれてありがとな！」


「一郎くんのラップすき！」


「弟たちのこともよろしく！」


一郎くんはファンサービスが凄い。多分ファンの顔を一人一人覚えている。
サイファーが終わるとファンの子達がバスブロ周辺に群がるのだが、私は1度もしたことが無い。

1回ぐらい話しかけてみたいが、体温が高くなりすぎてのぼせた人みたいになるから絶対に無理だ。




『……今日もかっこよかったなぁ、帰ろっと』



そこで手を掴まれる

誰に？いや、ほんと誰に掴まれてるんだろう



「……はぁはぁ……ちょっと待ってください」


そこには息切れをした一郎くんがいた



体温が急激に上がるのがわかる。お風呂上がりみたいになってると思う。



「あんた、いつも来てくれるから。１回お礼したかったのにすぐ帰っちゃうからさ。」


あ、好きだ。こういうところプロ意識すごいなぁって思うの。



『一郎さん、忙しいと思って……いつか私も話しかけたかったんですけど勇気が出なくて…すみません疲れてるのに走らせたりして。』


「あっ、いやいいんだ。俺がしたくてしたことだからさ。多分俺のファン、だよな？2年前ぐらいから見慣れた顔だからさ。」



ドキッとする


同じ学校に通ってたんだよ〜〜！！


なんて言えないけど



一郎くんが私のこと知ってたってことだけで嬉しくて溶けてしまいそうだ。

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