ランシェットは君と一緒に【A3!】 (ページ10)

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いつだって、君と。ページ10

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潮の匂いと、テレビでよく見る柔軟剤の良い匂い。それと重なるように、彼が開いた袋から香る甘いもの。

「わぁ～…！」

目を輝かせておいしそう、と声を漏らす彼の肩にソッと凭れかかった。その顔を私に向けて、たべてもいい？だなんて聞くものだから、少しだけ笑ってしまった。

「斑鳩くんのために作ったのに、食べないでどうするの」
「ん～、残しとく？」
「まずくなるよ」
「Aの作ったやつならぜーんぶおいしい！」
「あはは、ありがと」

ゆらゆら、彼が横に揺れればさんかくのピアスが陽に反射して夕暮れに光る。無意識にそれに手を伸ばして触れた。ひんやりとした触感が肌に伝わって、心地良い。

「…ね、これ、開けた時って痛かった？」
「ちょっとだけ痛かった～…。でも、さんかくが入るって考えたらどうってことなかったよ！Aも開けるの？さんかく？」
「どうしようかなぁって悩んでるの。三角かは分かんないかな」

そっかあ、なんて、彼の手が私の耳朶に触れた。くすぐったくて身を捩るけれど、彼は気にしない様子で弄ぶ。

海の方へ顔を向ければ、波の動きと一緒に音が耳に届く。地平線の先を眺めて、ふと、思い出した。

「そのお菓子、斑鳩くん何か知ってる？」
「ううん、知らない」

袋からひとつ、さんかくの形をしたお菓子を取り出す。

「ポルボロン、ってスペインのお菓子なんだけど、とある言い伝えがあるんだってさ」

力を入れればすぐに崩れ落ちてしまいそうなほど軟らかなお菓子。一口サイズに作られたそれを口に放り込んだ。

「口の中に入れて、溶けてなくなる前に『ポルボロン』って3回言えたら幸運が訪れる」
「ぽる、ぼろん？」
「うん。ポルボロン」

首を傾げながら、何度かポルボロン、と呟く彼を見つめる。

「Aは言えた？」
「まだやってない。斑鳩くん、やる？」
「やる～！」

ひとつ取り出して、口に入れる。ポルボロン、ポルボロン、ポルボロン。3回言えたら幸運が彼の元に。

「…ん、」
「…どう？」

そう聞く前から、彼の嬉しそうな顔がこっちを向いた。どうやら、その様子だと言えたらしい。

「言えた！」
「良かったね」
「うん！Aも、はい」
「…わたしも？」

もちろん、と言わんばかりに力強く差し出された袋。しょうがないな、って私も挑戦してみることにした。