初恋あじ の とくべつ風味 ページ9
＊＊＊
｢好きなやつ、いたんだな｣
ようやく発した声は、想像より冷たいものだった。
きっとAなら上手くいく、なんて気の利いた台詞で背中を押してやることもできない。
そんな自分が嫌になる。
｢その人はね、初恋の人なんだ｣
｢……オレと同じだな｣
そんな幸せそうな顔見せないでくれ。
オレが知らない誰かがAにこんな
オレの気持ちなんて伝わるはずもなく、Aは珍しく饒舌に話し始めた。
｢彼はね、全然素直じゃなくて 自信家で 生意気で｣
｢でも そんなところも可愛くてね｣
｢……っ｣
｢なのに、演技してる時はすっごくキラキラしてて格好いいの！｣
｢昔から近くにいるのに、一緒にいて全く飽きないんだ。ふふっ、からかいがいのある ちょっとアホな子だから｣
｢…そうやってすぐ赤くなるところも、
大好きだよ、天馬くん｣
最後まで聞くまでもなく、察してしまった。
いや、察したというよりは伝えられた。
さすが大女優というべきか、表情だけで感情を伝える術を知っているのだろう。
慈しむような愛情に満ちた表情を向けるAから、林檎のように赤く染まった顔を隠すように背ける。
｢っ……やめろ！｣
可愛いね〜、なんて頬をつついてくるA。
こいつ、絶対オレの気持ちに気付いてただろ…
何にしろ 今の状態は全てAの思うつぼだ。
男としてこのままやられっぱなしは屈辱だ。
｢A、目 瞑れ｣
｢えっ、キスはまだ早くない？｣
｢はぁ！？ちげえよ馬鹿！｣
きっとAに勝てる日は来ないんだろうな、と心の中でポツリと呟く。
でも今だけは
｢あ！これ…前話してたお店の…！｣
目を瞑ったAの手に置いた、ラッピングされたマカロン。
それを見たAはあの雑誌を見ている時より幸せそうな笑顔を見せた。
｢ずっと前から好きだった｣
ようやく伝えられた
｢…わたしも｣
そう言ってはにかむAに
気付けばオレは唇を合わせていた。
それはまるでドラマのワンシーンのようで。
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作者名：MinT・パンナコッタ・さやえんどう・すずめ・ひなた＊ x他4人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2017年6月1日 18時
