3.スーツの人 ページ3
あ「じゃー…。また。」
和「ん。また、帰りか夜か、明日か。」
あ「ん。」
駅に着くと、それぞれ反対側のホームに別れた私たち。
先に私の電車が来たので乗り込むと、窓から向こう側の和也が見える。
ポケットに片手を突っ込んで、眩しそうな顔をしている和也。
あーぁ、また猫背だよ？
シャキッとしなよ。もー。
その眩しそうな顔…よくするよね……。
さっきまでの余韻なのか、妙に和也が色っぽく見えてきて。
なんだか変な気分。
まだ収まらない自分自身の心臓の音を、やけに大きく感じる。
「あ、見て見て、あそこのスーツの人！」
近くに乗っている女子高生たちの話し声が、
ひときわ大きくなって耳に入ってきた。
「え？どの人どの人？」
「やだ、超かっこ良くない？」
「ほんとだー。毎日この時間にいるかなぁ？」
あらあら、和也くんの事じゃないかい？
ふーーん……。
社会人になっても、さっそくモテてますのね？
やっぱり和也は誰の目にも、かっこいいんだよなぁ……。
私はなんだかそれが嬉しくて、誇らしげな気持ちになったりして。
と同時に、他の女の子には見て欲しくない……
なんて気持ちになるような、ならないような…。
お複雑？な感じ。
…唯一の幼馴染みだから、かな……うん。
発車のベルが鳴り、電車が動き出す。
私は小さく和也に手を振ってみた。
こちらを見ているかどうかも分からなかった和也は、
「ん。」
って、顔だけ返事をしてくれた。
ありゃ、こっち気づいてたんだ……。
なんだかくすぐったいような。
嬉しくなっちゃう私がいた。
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作者名：みなもん
| 作成日時：2015年4月7日 0時
