『パパがいる』

29 TH side ページ29

『ママ〜この人誰？』


『この人は...』


「僕は、お母さんの友達だよ」


『この前あったことある人だよ』


『ん〜わかんない』


「眠いの？」


『いつもはこの時間寝てるから』


「ああ、ごめん」









ダイニングテーブル

四つの椅子のひとつに腰掛けた

みかんちゃんが俺を誰かと聞いた

この前あったのに...まあこんなオフの姿じゃ余計に覚えがないのか

眠いのかと気にかけたら

『いつもこの時間は寝てるの』って

迷惑だと自分の存在が申し訳なくなる








『ごめん、お風呂はいらせないと...』


「ああ、うん」


『あ、ごめん。お茶出さないで』


「気にしないで。水飲んでいい？」


『うん、コップは適当に。すぐ出る』


「わかった。」








2人が行った後、机に体重をかけて流しに向かう

俺が歩くたびきしむ

油臭い錆び付いたアルミのキッチン

シンクってそんな名前に似合わないほどに水垢だらけだ

蛇口もひねる形の物

俺の宿舎のものは上にレバーを上げれば簡単に出る

しかもこんな氷のように冷えてない、温かみがあるものだ

蛇口の先には簡易の浄水層が取り付けられていて

なんだか、古びたものだらけの環境に切なさを感じた








「暗い... 」








水でいっぱいにしたコップを片手にあたりを見回す

古びたアパートでも部屋は複数ある2人には十分な間取り

子供を持つ環境ならもっとおもちゃがあっていい

テレビの下にはハードティスクがあっていい

週末にやる映画を録画したり、DVDを借りてきて一緒に見たりできるのに

服なんかプラスチックの棚に入れるんじゃなくてラックに並べたらいい

その横にドレッサーがあればいい

またその横におもちゃのドレッサーなんかあったら2人でお化粧ごっこが出来るのに

テーブルには難しい書類なんかいっぱい置かなくていい。









「大変そうだなあ。」









扉の向こうからみかんちゃんの声がする

笑い声がする

Aの声も聞こえる

叱ってる

でもなんだか楽しそうな弾んだ声

じっとしてられなくてうろうろとした








プルルルルルル プルルルルルル








｢なに｣


JN『やあ！テヒョナ今どこだ！』


｢あれ、ヒョン｣








着信画面はジミナの表示が出た

なのに相手はジンヒョン

よく人の携帯を使うなこの人は








JN『おいどこにいるんだよ〜誰に何も言わないで』


｢別に、少し出かけてるだけです。｣








棚の写真立てに目が付いた

キルト生地の額

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