八十四話 呪いの鎖 ページ39
『名家』と云うのはかなり考慮した表現だった。
確かにあの財閥が名家である事に変わりは無いが、それ以外に名が付く。
魅麗「『鳳王』と云う苗字を、黒崎さんはご存知ですか?」
涼真「ええ、当主である宗一郎の資産は、凡そ一千兆円を超えていたと云う、あの大富豪。…………そして、『呪われた一族』でもある集団。」
『呪われた一族』である、鳳王家。
その血筋を引く、魅麗、月夜さん、そして済木月狂……。
魅麗「はい。幼い頃の私は、世界に名を轟かせる其の名前を、ブランドだと誤認識していました。」
相手の口調は唯々抑揚の無い声だった。
彼女の冷徹で残酷な一面が、声ひとつに表されてるかのような、美しくも刺々しい声だった。
魅麗「私の父は鳳王宗一郎の長男であり、次期当主でした。」
涼真「それは後に済木月狂を引き取った、彼の祖父に当たる人物ですね?」
魅麗「はい。名を、鳳王純一(じゅんいち)と云います。父は鳳王と云うブランドに執着していた私とは違い、鳳王を棄て、手に職を付け、社会に革命を齎すを好みました。私には、そんな父が理解出来ませんでした。当主の椅子に座れさえすれば、何不自由無い生活が送れると云うのに、何故父は鳳王を棄てたのか、と…。」
そこで魅麗は息を吐いた。
白い息が、空気中に溶け込み、外の寒さを伝えている。
涼真「それがお父様との間に亀裂が入った原因ですね?」
魅麗「私はどうしても高級ブランドである鳳王を手放したくは無かった。だからどうしても父に当主として玉座に座って欲しかったのです。」
当時の魅麗は自分の家がどのように見られていたかなど、まるで知る由もなかったのだ。
魅麗「けれど私は気付いてしまいました。」
そこで漸く魅麗は、顔を歪ませた。
苦いチョコレートを噛み締めた様に、苦痛と闘う表情が見受けられる。
魅麗「私の伯母、鳳王凪海(なみ)は、自分の子供に食事を与えずに殺して、ホルマリン漬けにしたんです…!」
まだ十六にもならなかった魅麗が見た其の光景の恐ろしさ、おぞましさは、計り知れないだろう。
『呪われた一族』と云うレッテルを貼られた魅麗は、学校生活に置いても他の生徒とは常に疎遠だった。
けれど自分は魅麗の心に寄り添う事は出来なかった。
"魅麗も伯母と同じ仕打ち"を己の子に与えたからだ。
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日名無 りん(プロフ) - シェリーメイさん» シェリーメイさん、いつもありがとうございます^^*緋き妖にも目を通してくれていてとてもとても嬉しい限りです!私も冬は苦手なんですよね笑お守りだなんて…!!私も読者の皆様をお守りに冬も受験も乗り越えます!! (2019年11月24日 20時) (レス) id: 0a69449343 (このIDを非表示/違反報告)
シェリーメイ - この小説が無かったら私の冬は地獄… (2019年11月23日 19時) (レス) id: e2657486e4 (このIDを非表示/違反報告)
シェリーメイ - 日名無 りんさん» こんばんは!骨の随までシリーズも黒蝶の夜にシリーズも、緋き妖もすごくすごく最高最高!(〃ω〃)最近インフルエンザが流行ってます。私達読者も、日名無りんさんも、体調に気をつけましょ!私は勝手ながらこの小説をお守りにして、苦手な冬を乗り越えます(^^)/ (2019年11月23日 19時) (レス) id: e2657486e4 (このIDを非表示/違反報告)
日名無 りん(プロフ) - ハルシナさん» こんにちは!初めから見てくれているのですね。嬉しい限りです!いえいえ、天才なんて滅相もないです!笑 うわああ、ありがとうございます!私も読者の皆様が大切なので、体調管理には十分に気をつけてくださいね (2019年11月11日 23時) (レス) id: 0a69449343 (このIDを非表示/違反報告)
ハルシナ - この作品、初めから見てます!作者さん天才だな?いつもドキドキしながら見てますよ!体に気をつけて更新してくださいね?作者さんは、私たちのことを考えて更新してるかもしれないけど、私たち読者は作者さんの体のことを一番に思ってますよ!これからも頑張って! (2019年11月11日 18時) (レス) id: 91b89ed012 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日名無 りん | 作成日時:2019年9月3日 0時