紅い華と聖夜 (ページ2)

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Ⅱ. Mein Mann ist Antich Dolce. ページ2

昨年の受験を無事に終え、難関度の高い有名私立大学に入学した月狂は、華の大学生だ。

だから去年はクリスマスもバレンタインも一緒に過ごせなかった。
だけど、今年のクリスマスは一緒に過ごせるのだ。

ロココ調の装飾が施されたドレッサーの鏡に映るのは、とてもとても嬉しそうな自分の顏。

A「可愛いって、思えてもらえたらいいな。」

慣れない手付きで巻いた髪は、しっかりと緩くカールになっている。

A「変…じゃないかな？」

鏡の中の自分を再度見つめてから、私は世にも珍しい、アンティークドールの様に端麗な彼の貌を思い浮かべた。

日光を知らない白百合の様な肌に、まるで深紅の薔薇の華から色を取った様な紅い唇。
珠玉の様な瞳を贅沢な程に伸びた長い睫毛が縁どっている。
そして、妖艶で、艶やかで…何処か狂気じみた美しい笑み。

私の彼氏、済木月狂は、この世の者とは思えない程に美しい人だった。

そんな彼の彼女として、少しでも可愛くなりたかった。

その為に少しばかりお化粧を施して、髪も巻いて、卸したてのブランド物のワンピースだって新調した。

彼に相応しい完璧な女の子になりたい。

そう零す私に対して

「どうして？Aは既に世界中の誰よりも可愛いのに？殺して永遠に飾りたいほど美しいのに？」

彼は私の事を、可愛いと言ってくれるのだ。