10 Butterfly ページ10
「お兄ちゃん!」
嗚呼、愛しい
愛しい君の声だ。
A「お兄ちゃん!どうしたの!?」
俺の唯ならぬ様子に、顔を蒼白させ、目を見開いた。
狂夜「大丈夫。Aが居なくて…心配で………。」
ああ、そうだ。
こんな時は、叱らないといけないんだ。
…なのにどうして…声が出ないんだろう?
A「お兄ちゃん、震えてるよ…。」
狂夜「………………して…」
A「え?」
狂夜「どうして急に居なくなったりしたんだ!!」
俺の怒鳴り声に、Aの肩がびくりと震えるのが窺えた。
愛しているからこそ、怒鳴るのだ。
A「…これ……。」
恐る恐る出した彼女の手の中には、先程花屋で見た『黒蝶』の薔薇だった。
ロゼッタ咲きの花弁が深紅の色を纏っている。
狂夜「どうしたの…これ。」
A「お兄ちゃん…今日15歳のお誕生日だから。」
其の言葉に、今朝、カレンダーを見ていたAの顔が直ぐに思い浮かんだ。
こんな……
こんな事されたら、叱る事なんて出来ないじゃない。
嗚呼…………俺の負けだ。
A「お誕生日おめでとう。お兄ちゃん!」
狂夜「ありがとう、A。」
A「私、いつもお兄ちゃんに何も出来てないから。」
可愛い理由。
何も出来てない?
狂夜「そんな事ない。Aと居るだけで、俺は幸せなんだよ?」
陶器に勝るとも劣らない彼女の白く、美しい首筋を指先で撫でる。
何て可愛らしいのだろう。
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作者名:日名無 りん | 作成日時:2019年10月20日 13時