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「………………き………。まき…………………」
朧げに聞こえる声にさえ、私の耳には届かない。
「まーき！」
望菜に肩を叩かれ、私は現実世界へ引き戻される。
望菜「もう、真希ってば、今日そんなにぼーっとしちゃってどうしたの？」
本気で心配しているのか、望菜は怪訝そうな顔をしている。
真希「………あー、うん。大丈夫。」
私にもよく分からなかった。
ただ、何となく広島に来てから、言葉では言い表せない感情があった。
気付くと、いつの間にか原爆資料館に居た。
先生が、74年前の広島での出来事を説明している。
……………ふと、目の前に立つ被爆者を再現した人形を見上げた。
ボロボロの服。
ケロイド状の肌。
光を失った瞳。
今から74年前――――――。
数えきれない人々がこんな姿に変わり果てた。
つい数分前まで、色んな表情をしていた人間が、同じ姿になった。
水を求めて死んでいった。
クラスの人達は口を半開きにして目の前の人形に目を奪われていた。
こんな残酷な世界が本当にあったのだと。
私はまた真っ直ぐに人形を見た。
「……………水ヲ…………クダサイ……………。」
誰に足をガっと掴まれた。
足元を見ると、左の眼球が飛び出て身体中にガラスが突き刺さり、大火傷を負った人が、私の足首を掴んでいた。
「…………アツイ…………アツイ……………………水ヲクダサイ………………………アツイ……………！！」
足首から熱が伝わってくる。
あれ………………私…………………………
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作者名：日名無 りん | 作成日時：2019年7月4日 23時
