骨の髄まで愛してるーヤンデレ彼氏の行き過ぎた愛ー

二十七話 馬鹿な世間 ページ29

月狂視点





「 ―――― Aさんについてお話を聞きたい。 」


櫻井刑事はそう言うと刑事手帳をしまった。



笑いそうになるのを抑えた。
…………仕方ない。
演技でもしてやるか。


月狂「…………もしかして、行方不明の件ですか……？」

俺は心配そうな粗振りをする。


櫻井「はい。貴方は確かAさんと交際されているようですが、事件の日何か彼女におかしな行動や発言などは見受けられませんでしたか？」




俺は笑いそうになるのを、口の中を奥歯で嚙むようにし堪える。


馬鹿刑事……
お前は正に、そのAが居る家の前にいるんだよ



とそんな事、言えるわけない。




月狂「……実はあの日、俺とAは出かける約束をしていたんですが、不幸にも俺が体調を下してしまって、無理になってしまったんです。それで、彼女が見舞いに来てくれると言ったんですが、いつまで経っても来ないので……もしかしたら、急用が出来たのかもしれないと思ったんです。そしたら、ニュースで行方不明になったなんて言ってるんで凄く驚いたんです」




俺はまるで事件現場を目撃した第一発見者のように、焦りと興奮の混じった嘘を偽った。





そして、刑事はそんな俺を疑う表情を見せない。



ああ、馬鹿だなあ………





櫻井「……………そうですか。ありがとうございました。では何か有りましたらこちらにご連絡ください」


櫻井刑事はそう言うと名刺を差し出した。




月狂「ええ、出来る限りの御協力は致します。」


俺は愛想よく言ってやった。



櫻井「ありがとうございます。では」

刑事は頭をぺこりと下げた。


俺は玄関のドアを閉めて、手の中にある名刺をグシャリと丸めた。

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