【実.況.者】どうにかしてください【sior】

未曾有 ページ9

あの後男達にデレデレされ、今もまだ緩んでいる彼らの頬を照れ隠しにつねってからAは財布を持った。

「……コンビニ行ってくる」

その一言で男達は皆着いていこうとするがAは拒否した。特に欲しいものもなかったが、熱い頬を冷まそうと思ったのだ。ある意味鈍感な男達を家に置いてAは扉を開けた。


コンビニの自動ドアを潜ると、顔見知り程度の関係の店員が「いらっしゃいませ〜」と言った。軽く会釈をしてから、５人分のアイスを買おうと売り場へ足を運ぶ。その店員は男な為あいつらが知れば怒るだろうな、とAは苦笑した。

本人はまだ気付いていないが、Aも何かにつけて彼らの事を考えている。今がいい例だ。

そんなAを見つめる視線が４つ。来なくていいと言ったのに家を出てきた4人は、自動ドアの外からAを凝視している。そしてAが買い物かごに入れたものがそれぞれの好きなアイスであることを確認するとまただらしなく頬を緩めた。

ただ今彼らがいるのはコンビニの外である。

もう一度言おう、

コンビニの外である。

自動ドアが開かないギリギリから中を見つめてニヤニヤしている男達は下手すれば通報ものだ。Aの事になると頭のネジがどこかへすっ飛んでいく男達もさすがに気付いたのか店内へ入る。

その時に見えた光景のせいで、男達は4人同時に額に青筋を浮かべた。

なんとAは、例の顔見知りの店員から連絡先を渡されていたのだ。Aは「？」を浮かべながらそれを何となく受け取り、男達の眉間のしわは濃くなる。どこか抜けているAはきっとこの意味をよく分かっていない。

店員の頬を彩る赤色にも、見知った男達の視線にも気付いていない。店員は男達の視線に気付き冷や汗を垂らした。別の意味で店員の心拍数は上がる。

睨み合う両者に挟まれたAはと言うと、

(アイス溶けちゃうんだけどな)

両者に全く興味がなく、アイスの心配だけをしている。Aは連絡先を適当にレジ袋に入れ、まだ頬を染める店員に「すいません、アイス溶けちゃうので」と言い放ち歩いていく。

残された店員は唖然としていた。

店の外で待ち受けていた男達はAからレジ袋を奪い取り連絡先をびりびりに破いた。特に気にしていない様子のAは「アイス食べよ」と男達の手を引いて足を踏み出した。

家に着いてからAはアイスが溶けている事に気付き、そうして店員の好感度は下がっていくのであった。

役不足→←不可逆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す