も う 愛 し て . . . [ k j ]

街に愛の歌 ページ8

赤×緑 ( 季節外れ )









.









.









すば るくん、一緒に帰ろ？






俺がそう言うと、すば るくんは一瞬吃驚したような表情をしたけどすぐに柔らかい笑みを作った。






『 ん、ええで。 』






………………なんて会話を楽屋で交わしたのはもう二時間も前。




今は、すば るくんとデート。




ひらひらと舞う粉雪の中で、俺らは並んで道を歩く。




すれ違うのは余程がカップルで、めっちゃいちゃつきながら通っていく。




ええなぁ………………俺らもほんまは人前でもいちゃつきたいわ。




手を繋ぎたいし、抱き締めたいし、キスもしたいし。




なんだったら、えっ ちやってしてもええ。




でも、それは許されないことやから。




近くに寄って並んで歩くしか出来へん。






「 ……………おーくら？ 」






ふと立ち止まった俺を見上げるように見つめるすば るくん。




そのまあるい瞳に吸い込まれそうになって、つい触れるだけのキスをしてもぉた。




すぐに離れたけど、俺らのキスを見ていた人らは目を丸くさせていた。




すば るくんも、吃驚しとるようで固まってる。






「 っ……………ごめん 」






ほんまに、調子乗りすぎた。




ごめん、とだけ言ってこの場を去ろうとすると、腕を掴まれた。






「 …………全然大丈夫やから。……………ほら。おいで？ 」






すば るくんの優しい声色に振り向くと 腕を広げて待っててくれる 小さな、でもとても頼れる胸に抱きついて泣いてしまった。




………………相変わらず周りの人らは珍しいモンを見るような視線やったけど構わへん。




今の俺らには関係ないから。






……………ふと、辺りに先輩の曲が流れはじめた。




少し吃驚して見渡すと、ツリーの近くにスピーカーがあって、そこから流しとるみたい。






もう大丈夫か？なんて男前な表情で聞いてくるすば るくんを、またぎゅっと力強く抱き締める。








…………街に愛の歌、流れ始めたらさ、






人々は寄り添うんやろ？






……………やったら、俺らやって寄り添ってもええやろ？






俺は、すば るくんの小さな掌を握りしめた。









.









.









fin.

好きだよ、って→←大好きメーター

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す