私、貴方のこと大嫌い【山田二郎】

嫌いじゃない ページ10

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二郎side






Aの顔が赤くなっていくのがわかる




こんな素っ気ない彼女でも顔を赤くするのかと、こっちまで体温が上がってきた





『貴方はなんでそんなに私の心を引っ掻き回すのよ...』





また貴方って言った


いつもそうだ、俺を呼ぶ時は｢ねえ｣とか｢ちょっと｣
とかさっきみたいに｢貴方｣だ


しかも俺ってAの心を引っ掻き回してんのか...


俺もお前に振り回されまくってるっての




二郎｢で、呼んでくれるの？呼んでくれないの？｣





すると彼女は俺を通り越して先に行ってしまった



駄目だったかぁ...



顔を赤くしてくれたから脈アリだと思ってたんだけどな...



やっぱり少しキツいや




『...ねぇ』




振り返るとそこには恥ずかしそうにしている彼女がいた




『なにボーッとしてるの？一緒に帰るんでしょ？二郎』





二郎｢〜っ！！！｣





可愛い！！！！！！！



もしかしてAのこの一面を知っているのは世界で俺だけなのでは！？




二郎｢おうっ！！｣




俺はAに追いつくため全力で走った



結局そうやって名前で呼んでくれるところ好きだな




『まったく、名前で呼んで欲しければ素直に言えばいいのに...』




二郎｢お前もな｣




はあ〜！？なんでよ！！


って言いながら俺の肩をポカポカ叩いてくる

全然痛くねえっつの


素直じゃないところも可愛いなあ



言ってしまってはだめだろうか

好きだって言ったらどんなに楽なんだろう


でももう失望されたくない

この関係を保ってた方が幸せなのかもしれない




『どうした、二郎？』



二郎｢なんでもねえよ！｣



俺は今、笑えているだろうか


好きなやつを前にして、好きだと言えない無力さ


それが俺の心を締め付けていく




『ていうか、本当に二郎が陽菜の事が好きなんだと思ってたわ』



ほら、もし俺が陽菜の事が好きでもコイツは平気なんだよ



『...でもちょっと安心したかも、何故かわからないけど』




二郎｢...え、ホント？｣




『私が嘘を言うわけないでしょ』





まさかこんなことを言われるだなんて



俺はガッツポーズした




二郎｢(よっしゃあああああ！！！)｣





彼女がこっちをジト目で見てくる




『え、なに。キモチワルイ』



多分俺の顔が緩んでるんだろう


許してくれ、嬉しいんだよ




二郎｢お前も素直になれよな！｣








俺は繋ぎたい手をそっとポッケに隠した





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