私、貴方のこと大嫌い【山田二郎】

大嫌い ページ4

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保健室



私は保健室の匂いが嫌いだ




お兄さんを思いだすから




消毒くさい部屋に、心電図の音

真っ赤に染まった部屋に、目を覚まさない兄



毎日毎日病院に通ったけど、目を覚ましたことは1回もなかった





二郎｢_____幸田、どうした？そんなに痛いか？｣




彼の声でハッと我に返る


生憎保健室の先生が出張で、私は彼に湿布を貼ってもらっている



『ううん、痛くない』



そう言うと彼は



なら良かった



と言って、笑ってみせる



彼は不良のはずだ

傷付ける側なのだ

なのになぜ私の手当てをしている？

馬鹿なのか？




『ねえ、人を殴ったことあるの？』




私はいつの間にかそんな言葉を口にしていた




二郎｢...えっと、急にどうした？｣



彼はすごく困惑した顔でこちらを見てきた



ものすごく考えている表情をしている


困らせちゃったかな...




『ごめん、忘れてくれていい___』




二郎｢...あるよ｣




『......え？』




まさかこんなクソみたいな質問に答えてくれるとは思ってもみなくて、正直驚いた


というか、この人あるって言ったよね？




二郎｢...人を殴ったことあるよ｣




やっぱそうか

そりゃそうだ、不良なんだから

期待した私が馬鹿だった


こんな優しそうな顔で手当てをするもんだから、もしかしたら他の不良とは違うかもと思っていた




二郎｢でも、無差別に殴ったりしないよ。俺の兄ちゃんがそういうの許さないんだ｣



そんなこと知らない

無差別に殴らないからって許されること？



『もういい、ありがとう』



私はつい冷たく言ってしまった


あんだけ大嫌いだ大嫌いだ言ってたのにな

彼の見たことない一面を見るとなぜか私の中で美化されていったんだ


私も落ちたものだな



結局不良は不良


傷付けることにしか能がないのか


馬鹿らしい




わかり切ってきたことなのになぜこんなにも悲しいの？


なぜこんなにショックを受けているの？



私はすぐさまに彼から離れて保健室を出ていった





二郎｢...ｯおい！A！！｣






やめてよ名前で呼ばないで


私を期待させないで


私を失望させないで



やっぱり私は山田二郎が大嫌いだ______

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