青side ページ27
大倉がずっと変やった。
丸と三人でのセッションやのに、まるで個々に演奏してるような感覚。
大倉がずっと丸を気にして、それを悟られないように孤立して、集中出来てないような感じ。
「ちょっと俺、御手洗行ってくるわ!」
丸がそう言って出て行った隙に俺は大倉に近づく。
「大倉、大丈夫?なんか集中出来てないみたいやけど」
「………ヤス」
「ん?」
「俺、やっぱり………許されへんかもしれへん………」
「?何の話して「亮ちゃんのこと」
ーードキッ
大倉の瞳はどこか鋭く、怒りを含んでるのがわかる。
その矛先が亮なんやってことも。
「な、なんで急に?丸との話なんやったら、この前は悪いことじゃないって言ってたやんか」
「…………丸ちゃんがまた同じ苦しみを味わうくらいやったら、俺は嫌われてでも阻止する」
「大倉、話がわからんよ!もっとわかるように説明し「ヤスにはわからん話なんよ!!」
大声を上げた大倉に俺は思わず「ご、ごめん」と返した。
大倉は頭を冷やしたかったのか何も言わずにスタジオを出て行った。
入れ違いで入ってきた丸は不思議そうな顔をしてた。
「たちょ、どーしたん?」
「……集中力切れてしまったみたいで、気分転換やって」
「そか、最近たちょ頑張ってるから疲れたんかな」
そう言って笑う丸は少しだけ寂しそうやった。
一瞬だけ見えた首筋の赤い点には触れないでいる。
それを付けた相手が誰かなんて何となくわかったから。
「ま「章ちゃん」
俺の言葉を遮って丸は俺に問いかける。
「たちょのこと、ちゃんと支えてあげてな」
丸の表情はやっぱりどこか寂しそうで、何かを隠してる感じやった。
「丸?」
「俺もちゃんと安心してもらえるようにするから」
「丸、もしかしてやっぱり亮と「亮ちゃんは関係ないよ」
そう言い切る丸は何も無かったようにベースの練習を始めた。
丸、やっぱりそうやったんやね。
丸はあの頃、亮のこと好きやったんよね。
同い年として近くで亮を見ていた身として、亮の気持ちは何となく知ってた。
やけど、まさか丸もそうやったんやね。
なぁ、今もそうなんやろ?
やのに、なんでそんな辛そうなん?
両想いやん?何がアカンの?
亮が抜けてから、調子が悪くなった事と関係あんの?
なぁ、丸。
俺なんにも知らんねん、誰も教えてくれへんねん。
俺に出来ることって何かないんかな?
俺は何をしたらいいんかな?
答えの出ない自問自答に俺は悲しくなって笑を零した。
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作者名:ひなまる | 作成日時:2022年6月27日 17時