罰ゲーム (ページ26)

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黒side ページ26

朝のギターの練習を終えてスタジオを出ると、丁度安と入れ違いやった。
安と少しだけ会話した後、俺はそのまま仕事場に向かおうとした。

『そう言えば、横ちょ聞いた？』

『なにを？』

『昨日、ヒナちゃん倒れたって話』

俺はすぐにマネージャーに確認した。
どうやらこの話は事実で、ヒナは昨日収録後に体調不良で倒れたらしい。
医師の判断は睡眠不足やって、マネージャーもそれを感じてたらしい。

レギュラー収録とスタジオでの練習にその他の仕事。
それだけこなしていて、この人いつ寝ているのか。
そんなふうに考えていたらしい。

『嘘つけ、顔色悪いねん』
『嘘ちゃうよ、今日もきっちり6時間睡眠してきたわ』

あの時からずっと言ってたのに。
俺は無性にヒナに対して腹が立ってきて、マネージャーに帰りは俺がヒナを連れて帰ると強く言った。
あまりのしつこさにマネージャーも折れてくれて、収録を終えたのと同時に帰って行った。
もちろん、ヒナに付いてたマネージャーも一緒に。

どうにかしてヒナには休んでもらうしかない。
その役目は今までの俺には出来んかった。
ずっと、隣にはすばるが居たから。
やから、俺には回ってこぉへん役割やった。

けど、すばるが居らん今は俺にしかできひん事で。

強引やってわかってるけど、実行してみた。
案の定、ヒナは最後の最後に爆発した。
ここまで予想通りやねんから。

やから、ここからは未知の世界。

「…………あんた、なにしてんの？」

「お前が寝ようとせんから」

「いやいや、普通に考えて可笑し「ええから、寝ろよ」

すばる、お前はどうやってこの頑張り屋のスイッチ切ってたん？
今の俺はほぼ無理やり抱きしめながら背中を擦りながら寝かしつけようとしてる。
お前やったらこんな事せんでもいけたんやろ？

俺は、これ以上失いたくないんよ。

安が病気になって、すばるが抜けて、どっくんも抜けて、丸がおかしなって、大倉が体調不良になって。
ずっと同じ場所で笑ってる此奴が、ヒナが俺から離れていくこと考えたら怖いんよ。

すばる、俺に出来ることって何やろ？

そんなこと考えていれば、隣から規則正しい寝息が聞こえてきた。
チラッと顔を見ればぐっすりと眠ってるヒナの姿。
やっぱ疲れてたんやんか、そんなすぐ寝れんねんから。て
ゆっくりと俺はヒナから離れて、きっちりと布団をかけてやる。

「おやすみ、ヒナ」

今はこんな事しか出来ひんのやと思う。
俺は自分の不甲斐なさに少し泣けた。