罰ゲーム (ページ12)

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緑side ページ12

「丸、今日は偉くご機嫌やね」

「え？そうかな？」

ヤスは「ええ事やなぁ」と笑った。
丸ちゃんもそんなヤスを見て笑ってる。

俺がお願いした買い物帰りから、ずっと幸せオーラが放たれている。
ライブの構成を考えてる隣から感じるオーラがライブに影響するねん。
もうちょっと抑えて欲しかったわ。

でも、こんな幸せオーラ全開な丸ちゃん、久しぶりに見た。

『俺な、りょーちゃんと別れてん』

2年前、急に告げられたことやった。
酔っ払っていた丸ちゃんはご機嫌そうに伝えてきた。
でも、その笑顔が嘘なんはすぐに分かった。

ふたりが付き合っていたことは、丸ちゃんからずっと相談を受けていたから知っていたこと。
亮ちゃん側から話を聞いたことは無い。
もしかしたら、メンバーで知ってるのは俺だけなんかもしれへんし。

『な、んで……？』

『んぅ？りょーちゃんが、別れたいってゆーからさぁ』

『でも、丸ちゃん……亮ちゃんのこと………』

昔からずっと好きやった相手。
確かに亮ちゃんはメンバーじゃなくなる。
けど、それとふたりは関係ないやん。
好きなら、ずっと付き合ったままでええやん。

けど、丸ちゃんは気遣いやから。
亮ちゃんのことを考えて、受け入れた答えなんやろう。

『………しんどない？』

『うん、明日からもーっとがんばらないとやしな！』

確かに俺らは、またここから再スタートしないとあかん。
けど、それでもやん。

『………丸ちゃん』

『んぅ？』

『明日、一緒にスタジオ入りしよか』

『えぇ！たちょ、泊まってくれんの！？』

この日から俺は丸ちゃんの幸せそうな笑顔を見てなかった。
別にいつもの笑顔が嘘とは言わへん。
ただ、何かが違っていた。

今日の丸ちゃんは、昔の丸ちゃんのようだった。

「大倉は逆になんでそんな苦しそうなん？」

「えっ？」

ヤスの意識がいつの間にか俺に来てたらしくて、俺は驚いて変な声が出た。

「ライブ、行き詰まってる？」

「いや……大丈夫よ！めちゃくちゃ良いライブにするから」

「みんなで、良いライブにしよな」

ヤスの優しい笑顔に俺は、何となく抱いてた胸のつっかえが取れた気がした。

丸ちゃんが出会った可愛い子が、亮ちゃんなんじゃないかってことを俺はまだ疑ってる。
けど、それを聞く勇気はまだない。

今はまだ、幸せそうな丸ちゃんを見てたいから。