山猫と山猫［尾形百之助］弍 (ページ43)

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八十六話ページ43

『百之助さん、何か食べたいものある？土方さんとかにも聞いたんだけど、最近は任せるの一点張りで。』

尾形とAが小樽にある土方らの拠点にいた頃
一度だけAが聞いた。

尾形はしばらく返事をしなかったのでAは特にないのか、と勝手に解釈していた。

しかし

尾「アンコウ鍋。」

『アンコウ…安価だし美味しいし、いいかも。』

尾形の小さな呟きをAは逃すはずもなくその日の夕飯はアンコウ鍋になった。

土「ほう…アンコウ鍋か。

　西のフグに東のあんこう…。あいかわらず美味そうだ。」

『今日は百之助さんの要望です。』

牛「尾形が？」

その日は珍しく牛山よりも尾形の方が多い量を食べたらしい。
Aは嬉しい限りであった。

就寝前…

『あんこう鍋に、なにか思い入れでも？』

尾「俺の家は貧乏だったからな。

　安くて美味かったのがそれだっただけだ。」

時は現在

杉元、アシリパ、白石、尾形、Aは食糧難に苛まれていた。

杉「ネズミも、下山するにつれていなくなってきたなぁ。」

白「はぁん…またネズミかぁ。」

杉「我慢しろよ。銃声が追手に聞こえちまうかもしれないから、鹿や鳥がいても打たない方がいい。」

白「ネズミばっかり～～～～～。」

ア「少ないけど尾形とAも食べろ！」

『私はいいよ。白石さんにあげな。』

白「Aちゃん優しい…くーん。」

ア「おがたぁ、ヒンナは？」

杉「ほっときなよぉ。」

尾「尾形はいつになったらヒンナできるのかな？

　好きなものならヒンナできるか？

尾形の好物はなんだ？
　なあA、しってるか？」

『…。』

Aはちらりと横にいる尾形を見るが、尾形はどこか上の空だった。

以前から好物の話になると尾形は黙り込んでしまうため、Aは出来るだけ触れないようにしてきたのだ。

『さぁ、なんだったかなぁ。

あ、嫌いなものは椎茸だよ。前に茶碗蒸しにいれたら椎茸だけ残したの。』

杉「ふっ。尾形も子どもっぽいとこあるな」

ア「茶碗蒸しってなんだ！」

『こんど作れたらつくるよ。』

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_____百之助、今日もアンコウ鍋だよ

_____鳥？それより、アンコウ鍋を一緒に食べよう

____あの人がおいしいっていってくれたから、
　絶対またここに来て食べてくれるから