山猫と山猫［尾形百之助］弍 (ページ40)

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八十三話ページ40

白「ひょー！飛んでるぜ俺たち！このまま網走まで行けるんじゃねえの？

　向こうでのんびりキロランケたちをまとうぜ！」

杉「小樽を出てもう2ヶ月以上かかっちまってるからな…。いそがねぇと。」

一行は気球に乗り、景色をのんびりと楽しんでいたが、急に機体が止まってしまう。

杉「おい、なんか止まったぞ。白石なおせるか？」

白「どれどれ…？

ウキー！！キッ！キキッ！」

バンッバンッ

杉「ウキッ、キッキキッー！」

バンバンッ

ガンッ

ア「どけ…。ウキー！！！」

ガンッッッ

尾「やかましい！！」

ア「Aもやれば良かったのに。」

『…。』

杉「あとは風の吹くままだぜ。」

しばらく風で進むことができたものの、岩肌に囲まれた山岳地帯に入ってしまい、衝突を避けるために一行は地上へと降りた。

尾「グズグズしてると第7師団に追いつかれるぞ。

　あんなに目立つ物に乗ったんだ、おおよその位置は把握される。」

杉元の出血が止まらず、アシリパが治療をしたあと、大雪山まで逃げていたが、やはり第7師団に見つかってしまう。

しかしこんな時に限って大雪山の気候が荒れ始め、冷たい風が吹き荒れる。

燃やす木もなく、追ってはすぐそこへ、そして残雪も少ないがために穴を掘って避難することもできない。

『このままだと低体温症に…‼

　白石さんの様子が変だ！！』

尾「風を避けられる場所を探すんだ！

　死んじまうぞ！」

ア「！！ユク(鹿)だ！！大きいのを4頭撃て！」

尾形がユクを4頭捕獲したあと、大雑把に皮を剥ぎ、その中に入って身を隠すことになる。

尾「お前は俺と入れ。」

『！でもユクは4頭…！』

尾「ちっ。」

尾形はAを引っ張り、無理やり同じユクの中へと入り込んだ。

広いわけでもないため、二人の体は密着する。

『…。』

尾「そう怒るな。この方があったかいだろうが。」

『まあ、そうだけど！』

二人の間に、しばし沈黙がはしる

尾「薩摩弁、話せたのか。」

『いろいろあってね。覚えたの。』

尾「そうかい。鯉登はタイプじゃなかったのか。」

『うーん、当時の私は結婚とか興味なかったから。
あと、音之進は幼馴染っていうイメージしかなくて、
そういう対象で見る気にはなれなかった。』

尾形は、Aの腹に回していた腕に、少し力を込めた。