ハンカチがきっかけで【アレスの天秤】 (ページ22)

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２０.突然の訪問者ページ22

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家に帰れば勿論、お母さんの姿はない。こんな事、慣れているはずなのに…胸にポカリと穴が空いているよう。

まともに話したのはいつ？

学校の事について楽しく話したのは？

＿＿お母さんの顔を見たのは？

『私が入学して、しばらく経った日…だったかな？』

正直、細かなところまで覚えていられるほどの頭は持っていない。

薄暗い廊下を歩くのはいつもの事。リビングに行っても、置き手紙とお金が置かれてあるのもいつもの事。

＿＿＿「おかえりなさい」という声がないのも……いつもの事なんだ。

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学校から帰って、明るい廊下を歩きたい。

置き手紙とお金ではなく、並べられた料理を置いて欲しい。

「おかえりなさい」という、お母さんの優しい声を聞きたい。

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『なんて我儘、更にお母さんに負担を掛けてしまいますよね……。』

私の望みは叶わない事だって、とっくの昔から知っていた。

置き手紙にある内容には、

本当にごめんね。

黒ペンで丁寧に書かれた文字。その文字は、結構ではないけど滲んでいた。これは一体何なのだろうかと考えていると、乾いた空間にインターホンの音が響き渡った。

『(郵便？)』

そう思っていた私は、置き手紙をテーブルに置いてそのまま玄関へと向かった。そして、ドアを躊躇いもなく開けると＿＿＿

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「氷雪さん、来ちゃった」

語尾に星かハートが付いている感じの話し方。今の時間帯はまだ、部活中の筈なのだけれども。

『あの、何で私の家が分かったのですか？』

沢山の疑問があるが、まずは私の家を知っているわけだ。基山さんに家を教えたことなんてないし、他の生徒さんはそれ以前に、関わりがないので知らないはず。

「それは秘密だよ。

あのさ、少しだけ俺に付き合ってくれないかな？」