ハンカチがきっかけで【アレスの天秤】 (ページ11)

今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:55,706 hit

９.見覚えの人ページ11

.

.

「あ？テメー…誰だよ」

イラついているような口調。まさか…声の主は、不良のような存在だったのだろうか。

いつもは下ろしている長い前髪を、耳に掛けて視界を少し良くする。普段はそんなことはしないけど、今回は例外だ。

『あの……誰なんですか…？』

控えめに言う私。その答えは直ぐに返ってきた＿＿＿＿＿＿＿＿

「人に名前聞く時は、先に自分から名乗るのが常識だろ」

ぶっきらぼうな言い方だが、確かにその人の言う通りである。常識というものを守れなかった私は、少々反省をしなければなりませんね。

『私は氷雪です。永世学園に通う者であります』

薄暗い中なのに一礼する。別に見えていても、見えていなくても構わない。

「へぇ……永世に…」

『あ、あの……名前を＿＿＿』

そろそろ名前を知りたい。その人だなんてあまり言いたくありませんからね。

「俺？俺は＿＿＿＿＿＿

.

.

.

.

＿＿＿＿＿＿吉良ヒロト。永世のゴッドストライカー様だ」

ということは、永世学園の人だったのですね。こんな偶然があるのだなんて少々驚きです。

ゴッドストライカー＿＿＿＿吉良さんはサッカー部なのでしょうか。

『…吉良さん……あの……』

「吉良さんじゃなくて、ヒロトって呼べ。

ほとんどの奴からそう呼ばれてるからな」

『……え』

人を名前呼びするだなんてしたことが無い。別に訳あって呼べないとかそういうのではなくて……

『では、" ヒロトさん "と呼ばせていただきます』

「あぁ？さん付けは要らねぇ」

困ったものだ。人生で一度も、呼び捨てだなんてしたことがないのだ。

呼び捨て＿＿＿＿＿時間が経たないと難しいです。

.

.

.

.

.

『呼び捨ては慣れていないので、" ヒロトくん "で許して下さい』