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短編小説 /この身は一生/ ページ28

――――『脛にキス




「姫」
平民共は皆彼女をそう呼ぶ。
「姫、ご気分は如何ですか?」
愚民共は皆彼女の御機嫌取り。

人々から”姫”と呼ばれる地位につく彼女は、いつも孤独だった。
彼女と対等に付き合ってくれる人間は一人としていない。何故なら、彼女は”姫”だから。一国の中で最も高い地位に君臨する人間だからだ。

「姫〜、お腹空いてませんか?」
――いや、『一人としていない』というのは間違いだった。正しくは、『一人しかいない』。
「……いいえ、別段そんなことはないわ」
「ええ、残念。折角美味しいクッキーを焼いたのに」
焼きたてのクッキーの袋をちらりと掲げ、笑うのはまだ幼い顔立ちの少年。
「……仕方ないわね。食べてあげないこともないわ。部屋に入りなさい」
彼女がそっぽを向きながらそう答えると、彼は嬉しそうにとことこと彼女のもとへと近づく。

彼は、姫の側近の執事だった。
沢山の執事の中で、彼女は彼を一番のお気に入りとしていた。いや、そのつもりはないのかもしれないが、彼女の彼に対する言動を見ていれば一目瞭然だ。他の人が彼のように姫に無礼な態度をとってみれば、一瞬にして切腹ものだ。

「ねえ」
クッキーを齧りながら姫は彼に訊ねる。
「どうして、貴方は私に優しくしてくれるの?」
一国の姫だといっても、まだ年端も行かない幼い少女。彼女は、いつも寂しかったのだ。寂しくて寂しくて溜まらなかったのだ。
「おべっかじゃなく、どうして皆と同じように扱ってくれるの?」
「そりゃあ、」
彼は優しく微笑み、そっと姫の前に跪く。

「我が国の大切な姫様が、寂しい思いをされては困りますから」
「それだけ?」
彼女は少し拗ねたように訊ねる。
そんなものじゃない、彼女が求めている答はそんなものではないのだ。
「それと―――」

「貴方のことを想い慕っているから。貴方が寂しい思いをすれば私も寂しいのです」
彼は彼女の煌めくドレスから伸びる足をそっと手に取り、その滑らかな脛に口付けを落とす。
「この身は、貴方の為にありますから」
今にも泣きだしそうな顔をしていた彼女は、そこでようやく微笑んだ。どうやら、満足のいく答だったようだ。
ふん、と位の高い人間らしく、つんと鼻を上に向け笑ってみせる。

「そんなの、当たり前じゃない」




――――『服従

短編小説 /何でもない日も、貴方と居れば/→←短編小説 /私だけの、貴方/


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設定タグ:キス , 意味 , 零ーレイー   
作品ジャンル:得する話, オリジナル作品
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容姿端麗に生まれ変わり隊(プロフ) - 『頬』と『額』は親しみ感が溢れてていいと思いました(o^−^o) (2019年4月29日 13時) (レス) id: 26de7c6d79 (このIDを非表示/違反報告)
沖蘭 - ちなみに頬へのキスは海外だと挨拶に近いですね。私も海外に住んでいるので親しい人とは頬にキスします。 (2017年2月26日 6時) (レス) id: 63d7861522 (このIDを非表示/違反報告)
沖蘭 - 月が綺麗ですねから来ました!!鼻梁は鼻筋の事ですよ。面白かったです!こんなことをしてくれる彼氏が欲しいです。続編も楽しみにしています!頑張ってくださいね!! (2017年2月26日 6時) (レス) id: 63d7861522 (このIDを非表示/違反報告)
零ーレイー(プロフ) - とりあえず完結しました〜!皆さま本当にお付き合いありがとうございました<(_ _)>近々続編を作るつもりなのでそちらも是非よろしくお願いします! (2017年2月11日 23時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)
零ーレイー(プロフ) - のわあああ、意味が意味なのでヤンデレ続きになって申し訳ないです……全然純愛じゃない…キスの格言に相応しくない…… (2017年1月31日 20時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:零ーレイー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/hina99121/  
作成日時:2016年8月31日 18時

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