短編小説 /その音色に、恋をした/ ページ18
――――『瞼にキス』
〜♪〜〜〜♪♪
美しい音色が音楽室に響く。
透き通った、何処か切ないような高音だ。
「…………」
彼はぼんやりと彼女が演奏している姿を見つめる。
彼女が息継ぎをするたびに体が揺れ、その細く白い指で優しく触れるように持っている楽器がキラキラと銀色に輝く。
「…おい、おい！」
彼が座っている後ろの席からぽんぽんと肩を叩かれる。
不意のことだったので少し驚いたが、すぐに振り返る。
「何？」
「お前、真面目に練習しろよ？」
「やってるじゃねーかよ」
「嘘つけ、先輩に見とれてて全然吹いてねーじゃねーか」
彼の肩を叩いた張本人の膝の上には、アルトサックスが横たわっている。
「わーってるよ」
彼はそう言うと、ずっと彼の手の内にあり少し生温くなった金属の塊を持ち上げる。
フッと息を通し、内部に溜まった水蒸気を飛ばした後、優しく唇を当て、指を動かす。
頭の中を連符が駆け巡る。音程、リズム、全てに気を払いながら楽譜を追う。
彼の持つ楽器はフルートという木管楽器だ。彼の憧れる彼女もまた、同じ楽器。
――――
「おい、俺は帰るけどお前はどうする？」
「んー……俺はもうちょっと残るよ」
コンクールが近いということもあり、部活が終わった後も自主練として残っている人はちらほら居たが、流石にこの時間になるとほぼ全員が帰宅していた。
「そう、じゃあな」
「ああ」
音楽室に残っているのは、彼女と彼、二人きりとなった。
彼はまだ完璧とは言えない連符の部分を繰り返し練習する。
腕が痛くなり、少し休憩しようと、床に置いてあった水筒を手に取る。
もう冷たくなくなったお茶を流し込み、ふと彼女は何をしているのかと辺りを見回す。
先程までは机に向かって譜面に何か書きこんでいたようだが……
「………」
彼女は、赤いボールペンを握ったまま机に突っ伏して眠っていた。
『連符走らな』そこまで書き、力尽きたのか。『い』と書きたかったであろう場所には不可解な線がたくさん引かれていた。
彼女は頑張り屋だ。今日もたくさん練習して疲れたんだろうな。
そう思った彼は、彼女が握るボールペンをそっと抜き取り、ペンケースに仕舞った後、その閉じられた瞼にキスを落とした。
そしてまた、彼女が起きるまで練習をしようと、フルートを持ち上げたのだった。
――――『憧憬』
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
革ベルト
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あずきいろ
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8
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容姿端麗に生まれ変わり隊(プロフ) - 『頬』と『額』は親しみ感が溢れてていいと思いました(o^−^o) (2019年4月29日 13時) (
レス) id: 26de7c6d79 (このIDを非表示/違反報告)
沖蘭 - ちなみに頬へのキスは海外だと挨拶に近いですね。私も海外に住んでいるので親しい人とは頬にキスします。 (2017年2月26日 6時) (レス) id: 63d7861522 (このIDを非表示/違反報告)
沖蘭 - 月が綺麗ですねから来ました！！鼻梁は鼻筋の事ですよ。面白かったです！こんなことをしてくれる彼氏が欲しいです。続編も楽しみにしています！頑張ってくださいね！！ (2017年2月26日 6時) (レス) id: 63d7861522 (このIDを非表示/違反報告)
零ーﾚｲー(プロフ) - とりあえず完結しました〜！皆さま本当にお付き合いありがとうございました<(_ _)>近々続編を作るつもりなのでそちらも是非よろしくお願いします！ (2017年2月11日 23時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)
零ーﾚｲー(プロフ) - のわあああ、意味が意味なのでヤンデレ続きになって申し訳ないです……全然純愛じゃない…キスの格言に相応しくない…… (2017年1月31日 20時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：零ーﾚｲー | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/hina99121/
作成日時：2016年8月31日 18時
