短編小説 /頑張り屋さん/ ページ16
――――『手の甲にキス』
「〜は至急こっちの仕事を終わらせて！」
「はい！」
「貴方たちはこっちを。今日中に片付けるよ！」
「はい！」
彼の上司は、女性だ。
黒髪を一つに束ね、灰色のスーツを着こなしたその姿は、とても凛々しく、美しい。
てきぱきと仕事を終わらし、そのうえ気遣いも出来て優しいときた。慕われないはずはないのだ。
「……？」
しかし、今日の彼女は何か違う。
ぼんやりしている時間が多い気がする。それに、頬も少し赤い様だ。
彼女が飲み物を買おうと席を立ったのを見て、彼も彼女についていく。
「おい、何処行くんだよ？」
「あ、ちょっと……トイレに」
不思議そうにする同僚を適当にあしらってから、彼女の後を追う。
「先輩！」
ガコン、と音がして赤い自販機からコーヒーが転がり落ちてくる。
「どうしたの？」
それを拾い上げながら彼女は彼に問う。
「あ、えっと……」
しかし、いざその時になってみれば、掛ける言葉など見つからないのだ。
『体調大丈夫ですか？』なんて聞けるわけもない。
「…何にもないんだったら、仕事に……」
掛ける言葉が見つからなかったから、彼は行動に移した。
彼女の額に手を当て、自らの体温と比べる。
「…やっぱり、ちょっと熱いですよ」
「なッ…！？」
突然のその行動に、彼女は少なからず驚いた様だ。
―――やっぱり、不味かったかな？
「急に、何を…！」
「体調悪いんだったら休まれた方がいいですよ」
「……出来ない。皆が仕事しているときに私だけ休むなんて出来ない。しんどいのは、皆だって同じなんだから」
首を振る彼女を見ると、何だかすごくもどかしくなる。
無理やり手を引いて、仮眠室へと連れてきた。
「何するの！？だから、私だけ休むなんて出来ないって…」
「１５分だけでも寝てください。風邪、酷くなりますよ」
「………」
「皆に風邪をうつす方が迷惑じゃないですか？」
「………ッ」
彼の言葉に何も返せなくなった彼女は諦めたように簡易ベッドに寝転がる。
「……絶対。絶対１０分経ったら起こして」
「はい」
そういうと彼女はすぐに寝息を立てはじめた。
ここのところ仕事が忙しくてろくに睡眠もとっていなかったのだろう。
彼はそんな頑張り屋さんな彼女の手を取ると、彼女を起こさないようにその手の甲にそっと口付けた。
「どうか、無理だけはしないで」
――――『敬愛』
短編小説 /惚れた弱み/→←短編小説 /あたしの想いは伝わらない/
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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容姿端麗に生まれ変わり隊(プロフ) - 『頬』と『額』は親しみ感が溢れてていいと思いました(o^−^o) (2019年4月29日 13時) (
レス) id: 26de7c6d79 (このIDを非表示/違反報告)
沖蘭 - ちなみに頬へのキスは海外だと挨拶に近いですね。私も海外に住んでいるので親しい人とは頬にキスします。 (2017年2月26日 6時) (レス) id: 63d7861522 (このIDを非表示/違反報告)
沖蘭 - 月が綺麗ですねから来ました！！鼻梁は鼻筋の事ですよ。面白かったです！こんなことをしてくれる彼氏が欲しいです。続編も楽しみにしています！頑張ってくださいね！！ (2017年2月26日 6時) (レス) id: 63d7861522 (このIDを非表示/違反報告)
零ーﾚｲー(プロフ) - とりあえず完結しました〜！皆さま本当にお付き合いありがとうございました<(_ _)>近々続編を作るつもりなのでそちらも是非よろしくお願いします！ (2017年2月11日 23時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)
零ーﾚｲー(プロフ) - のわあああ、意味が意味なのでヤンデレ続きになって申し訳ないです……全然純愛じゃない…キスの格言に相応しくない…… (2017年1月31日 20時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：零ーﾚｲー | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/hina99121/
作成日時：2016年8月31日 18時
