肆。 ページ4
｢あに、さ…ま…？｣
｢そうだ、お前の兄の山姥切長義だ。
可哀想に、驚いてしまったのか？
大丈夫、ここにはお前を傷つける者はいないよ。｣
あにさま、あにさまだ…！
そっと抱きしめてくれる兄様。
優しい声でだんだん落ち着いてくる。
｢ちゃんと呼吸できてる。偉いぞ。｣
微笑みかけてくれるから余計安心して涙が出てくる。
｢おっと、どうしたんだい？｣
｢っふ、あにさま、ぼくね、あのね、｣
言いたいことがあるのになかなか出てこない。
地下に幽閉されてたときから会えたら何話そうか決めていたのに。
｢うんうん、ゆっくりでいいから。
なに？兄様に話してごらん？｣
｢あの、ね、僕ずっと…兄様に会いたかったのです…｣
｢俺も会えて嬉しいよ。こうやって話すのも久しいからね。｣
背中を一定のリズムでトントンと優しく叩いて、涙を拭ってくれる。
｢夢を見てるみたいです…｣
小声で兄様の服に顔を填めながら言うが聞こえていたらしく兄様の動きがピタッととまる。
｢もも、これは現実だよ。
そうだね、強いて言うならば現実に戻ってきた、かな。もう悪夢は終わったんだ。｣
悪夢…？
夢、現実…？
そっか、俺はもう寂しい思いをしなくてもいいんですね。
もしこれが夢だとしても兄様に会えたことが満足です。
｢さぁ、もう一度お眠り。
おいで、こうやって手を握っていれば悪夢など見ないだろう？｣
｢ん…！！
ありがとうございます、兄様…！｣
｢嗚呼。おやすみ、もも。｣
｢おやすみなさい…！｣
続く
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作者名：雛 | 作成日時：2020年1月19日 18時
