神隠し dream ページ30
"誘拐事件が起こりました。現場には何も残っておらず、神隠しと言われています。"
"周りは誘拐された子の名前も、誘拐された記憶も無くなるそうで───"
ピッと音を立て、テレビは何も映さなくなった。
電源ボタンを誰が押したのか､何て分かり切っている。何故なら、同居人は一人しか居ないのだから。
そう、唯一の同居人､dream。其のdreamは此方に笑いかけている。
其れが圧を掛ける為の行為なのか、素のものなのか。まだまだ彼を理解するのには時間が掛かりそうだ。
dr「ねぇ、Aちゃん。僕と一緒にお昼寝しよう？」
「…うん、dream。」
dreamに対しての返事は此れ以外に無い。何故かというと、私は此処に住まわせてもらっているからだ。
うん、分かった。其れ以外の返答をすると、dreamは軽く不機嫌になる。私に嫌だ､何て言う権利も何も無い。
dr「おやすみ、Aちゃん。」
本当ならば嫌だ。最近は夢の中までdreamが支配するからだ。
夢の中のdreamは、口を開けば直ぐに私に愛の言葉を囁く。好き、気付かないで、愛してる。甘ったるいったらありゃしない。
甘くて重い。例えるならば、ガトーショコラの様で。
ゆっくりと瞼が落ちて、すとん､と眠りにつく。
嗚呼、また始まるのか。歯の浮く様な台詞地獄が。
こんな事を言ったら、確実に不機嫌になられるだろう。其れだけは勘弁。
dr「Aちゃん、何処にも行かないで。Aちゃん。嫌だ、僕を置いて行かないで…好き､だから。」
こんな甘ーい台詞にも頷ける私、偉い。そして、其れが一頻り続いた後、私は目覚める。
夢現。もう、dreamの前では何処から何処までが夢なのかの区別が付かない。
そして、私はある事態に気付く。
──dreamが､寝ている。
dreamが、dream"さん"がまだ眠っている。チャンスだ。有難う神様。
やっと此の地獄から抜け出す事が出来る。そして、私は立ち上がり玄関扉へ向かう。
すると刹那、後ろから声がした気がした。
dr「ねぇ、何してるの？」
「あ、あぁぁ…dreamさん…！御免なさい、御免なさいdreamさん！！」
dr「敬語､止めてって僕言った筈だよ？」
僕から逃げるの、Aちゃん。そう言って私を見つめるdreamさん。
私は絶望した。逃げ出そうとした事がバレた事よりも、其れよりも…
dr「"神隠し"何だから逃げても誰も君の事を覚えてないのにね。」
dreamさんの台詞に深く、深く絶望した。
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ひこうちきん(プロフ) - なのださん» コメント有難う御座います！返すのが遅くなりすみません…初のシリアス系に挑んでみた結果が此方になります！インク君…可哀想な君は可愛…ゲフンゲフン (2023年1月3日 15時) (
レス) id: 05937225ef (このIDを非表示/違反報告)
なのだ - い、インクうあああああ (2022年12月31日 17時) (レス) @page10 id: 757190f567 (このIDを非表示/違反報告)
ひこうちきん(プロフ) - apyapiさん» コメント有難う御座います！とんでもなく嬉しいお言葉、有難う御座います…！！とても励みになりました、有難う御座います！ (2022年12月29日 16時) (レス) id: 05937225ef (このIDを非表示/違反報告)
apyapi(プロフ) - 一言（？）言わせて頂きたい。めっちゃ神作です！最高です！短編集って、短すぎても長すぎても・・・ってイメージがあるのですが、丁度良い長さ&行間で読みやすいです！この小説大好きです！（こんな神作を書いてくださる作者さんも！）更新頑張ってください！ (2022年12月28日 16時) (レス) @page46 id: 80520e762e (このIDを非表示/違反報告)
ひこうちきん(プロフ) - 星月夜さん» コメント有難う御座います！最高と言って頂けて本当に嬉しいです…有難う御座います！ (2022年12月18日 13時) (レス) id: 05937225ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひこうちきん | 作成日時：2022年11月30日 17時
