お姫様なんてIII ページ13
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メニューを開いて悩んでいるティナリ、それをじっと見ている私。こうしてちゃんと話をされるのは何年ぶりだろうか。前までなら、この人の立場になってたのは私だった。
(…前の私と違って、注文するのも少ないだろうけど。)
そして、彼からメニューを渡されたが受け取らなかった。
「…食べないって言ったのは聞いたけど、飲み物くらい頼んだらどう?それで元に戻るなんてないだろうし。」
「……いい。頼んだって、どうせ飲めないし。水で充分だから、君だけ注文済ませたらどう?」
「…わかった。すみません──」
いちいちカンに触る言葉をかけてくるが、小さなことで怒るのはやめることにした。これは昔からの性格だから、こんなことで争うなんて馬鹿らしいと思ったからだ。
(…久しぶりに話すっていうのに、嬉しいって気持ちにならないもんだな。)
注文を言い終えた彼は、私の目を真っ直ぐ見つめてきた。
「な、なに…。」
「…いや、久しぶりだから何を話すか店に入るまではずっと考えてたんだけど…。いざ話してみようってなると、内容を忘れちゃったからさ。」
「なにそれ。まぁ、学院にすぐ入ってからのあの事件以来なのは確かだけど…。先に突き放してきたのは君なんだし、話すことを避けてたのも私自身。気まずいのはいつも通りでしょ…。」
「…そのことについて話したかったんだよ。今まではその話題に切り出そうとした途端、君が逃げていくからね。」
「…そっちから約束しといて、勝手に離れていったのはティナリでしょ。おまけに、ガブリエルと出会ってからの君を見てるこっち側の気持ちにもなったことなんてないくせに。」
15になって、学院に入りたての頃だった。学力主義のスメールでは、成績の上位を巡って競うのは言うまでもない。その中でも、私は上位に入り込むことも出来ず途方に暮れていた。
ティナリは勉強が出来るのに、倍以上頑張っても届くことのない要領の悪さには勝ってこなかった。そんな私にいつも付きっきりで勉強を見てくれたのは、ティナリしかいなかった。…頭の中で分かってはいた、彼は努力も出来る天才なのだと。
悩んでいる中で、ティナリはある約束を持ち出した。
『約束しよう。僕が賢者になっても、君もいつかマハマトラになるって。そしたら、僕は君を守る騎士じゃなくなって、初めて対等になれる幼馴染みとして背中を任せられる存在になるだろ。』
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いるか(プロフ) - 補足は以上です、長々とお付き合いしてくださってありがとうございました。これをもちまして、この作品は本当に書き残すことがない作品…完結です。これまでご愛読頂きありがとうございました。セノお相手の夢小説も亀更新ですが、良かったら覗いて見てください〜! (10月8日 2時) (レス) id: 08985c907f (このIDを非表示/違反報告)
いるか(プロフ) - それと、考え方を変えた内容は【周りの視線や感情に左右されず、助けてくれる恋人や友人も自分の力】というものです。ちなみにガンダルヴァー村に残ったのも、教令院を途中でやめたからです。分かってくれる人が傍にいれば関係ないと皆に納得して貰えた決断でした。 (10月8日 2時) (レス) id: 08985c907f (このIDを非表示/違反報告)
いるか(プロフ) - 絵本作家の正体が分かった現在でも、”ラウラ”としてまた心を奪われます。結局のところ、ガブリエルはライラをも心に射止める天性のカリスマがあったからこそ、エピローグで幸せな家庭を築いた主人公ライラとティナリがいました。必要不可欠なキャラで間違いないです。 (10月8日 2時) (レス) id: 08985c907f (このIDを非表示/違反報告)
いるか(プロフ) - の題材として扱われたとわかる前、彼女はこの絵本作家の虜になりました。考え方を変えられるきっかけを作り、自分たちが起こった出来事が童話らしく書き換えられていたことにも気づきます。その時、ガブリエルは生きていたと心の中でモヤが無くなり、安心したライラ。 (10月8日 2時) (レス) id: 08985c907f (このIDを非表示/違反報告)
いるか(プロフ) - 人を蔑む行為はしなくとも、一時期はティナリを射止めた人物だからです。皆に愛されるカブリエルが無実の罪によって処されることは無いだろうと悟っていました。途中から登場していた、童話絵本と出会ってからライラは考え方を少し改めたのです。体験してきたことを絵本 (10月8日 2時) (レス) id: 08985c907f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いるか | 作者ホームページ:
作成日時:2023年4月20日 21時