第0章 7話 ページ9
辿り着いた信玄『家』は、紀天の建物によく似ていて、こちらで言う武家が住む城のようだった。
中ももちろん広く、立派で、私は先を歩く信玄についていくのに必死だった。
何度か角を曲がったところで、大きな広場に辿り着く。
信玄は段を一つ上ったところに座り、私はその前から少し離れたところに向き合うように座った。
貴「あ、あの…」
信玄「まあ待て、まずは茶でも飲もうぜ。」
家臣と思われる男性が運んできたお茶を一口飲んで、私は先程言いそびれた質問をした。
貴「えと…あの…ここはどこですか?紀天とは少しちが…だいぶ違いますし…。」
信玄「き…き…てん…?それは異国の名前か何かか?」
貴「そ、そんな…」
その表情は本当に分かっていないようで、頭の上には『?』のマークまで見えてきそうだった。
貴(本当に…分かってないみたい…)
信玄「おい、どうした?何考え込んでいるんだ?」
ここが紀天でないのは、信玄の反応から見て分かった。
しかし、そうなるとここはどこなのだろうか。そしてなにより一番の疑問は、彼の頭についている耳。あれは本物なのだろうか。
信玄「ん?何見てんだ?そんなに、耳が気になるか。」
まるで私の考えが分かっているかのような聞き方に、私は何と答えればいいのかわからなかった。
貴「え、えっと…」
信玄「あ、まさか、『人狼』を見るの初めてか?珍しいな。ほら、耳触ってみるか。」
私が戸惑っている理由を違う意味に理解したらしく、信玄は、私に向かって自分の耳をつきだした。
その耳はぴょこぴょこ動いて私の興味心をそそってくる。
貴「い、いいんですか?」
信玄「ああ。」
ドキドキしながら信玄の耳にそっと触れてみる。
耳から手の先に血の通った温かさを感じて確かにこれが本物なのだと分かった。
信玄「ははは。くすぐってえな。」
貴「え!ご、ごめんなさい…。でも、これ作り物なんかじゃなくて、本当に本物なんですね?!」
私の驚きぶりを変に思っているのか、信玄は私を気遣ってくれた。
信玄「どうした?何か混乱してるみたいだな。困ってることがあるなら、言ってみろ。」
目の前の彼が信じてくれるとは思えない。
けど、知らない世界に来てしまった私になど頼れるところがあるはずもなく、心の中はこれからへの不安が溢れるばかりで、たまらず私は、どうして森にいたのかも、どうやってあんな高い木に登っていたのかも、私自身、何一つわからないと目覚めてからのことを正直にすべて話した。
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桜夏幹(プロフ) - 顔がほっこり和みました。あぁ、信玄さん、優しいなぁって文字だけで丸わかりキラン! (7月5日 2時) (レス) id: 3d710f5422 (このIDを非表示/違反報告)
星空ネーム(プロフ) - 名無しさんさん» ありがとうございます!そう言って貰えると嬉しいです!本編となるべく沿って書くつもりです!ですが、昌景との絡みも今模索中なので楽しみにしててくれると嬉しいです!リクエストありがとうございます┏● (2018年10月8日 17時) (レス) id: 6e8006e895 (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん - とても面白い作品ですね!これからも更新頑張ってください!応援しています!!あとですね、本編では昌景との絡みを多くしてもらいたいです!!(ただ単に自分の推しだからという勝手な理由ですが)できるのでしたらお願いします!! (2018年10月8日 15時) (レス) id: fd12d3a52b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星空ネーム | 作成日時:2018年10月6日 17時