episode36 ページ37
今朝の事で屯所内には土方と私が遂に一線を超えた、と噂が飛び交っていた。
沖「なんで朝から稽古なんでィ」
あ「ごめん……」
噂を耳にした土方が、自分のした事の重大さにようやく気づいた。その頃には時既に遅く、それからの隊士達の質問攻めは、見ていてちょっと面白かった。他人事ではないのだが、少しは困ったら良いんだ。
なんて心で嘲笑っていると、何故か朝から稽古をすることになった。
いったい、どういう思考回路をしているんだ。職権乱用にも程がある。お陰で、私は総悟に小言を言われ続けている。どちらかというと、私も被害者なのだが。
総「謝る前にもっと野郎を警戒しなせェ。前から思ってやしたが、あんたは男に対しての警戒心がまるでない」
あ「面目ないです……」
生まれたときからここと同じような環境で過ごしてきたんだ。今さら性別がどうこうという感覚はない。寧ろ、語るなら腕っぷしで。これが私達だ。
終わる気配を見せない説教を受けている所に、場違いな笑顔を浮かべた近藤がやってきた。
近「まぁまぁ、そんなに怒るな総悟。仲良しで良いじゃねぇか」
総「野郎の場合そんなんじゃ済まねぇから言ってるんでィ」
近「トシなら大丈夫だって。そこら辺はわきまえてるよ」
総「わきまえてたら、こうはならねぇでしょ」
あ「あの、もうその話止めてもらっても良いですか?土方さんの目がずっとこっち見てて怖いので」
稽古をしている土方の視線は、総悟と話してる間、ずっとこちらを見ていた。正確には私ではなく、サボっている総悟を。
近「そうだ!Aちゃんもやってみるか?」
あ「え!?私まともに竹刀振れないですよ?」
近「だからこそだよ!なぁ?トシ!お前もそう思うだろ?」
土「……俺はどっちでも良い」
総「なら俺と一緒にやりやしょうよ、姉さん」
土「お前とやったら怪我するだろ」
総「そんなへまするわけねぇでしょ」
近「総悟は他の皆を見てやれ。そろそろちゃんと稽古しねぇとな!」
総「ちぇっ、分かりやした」
あ「総悟、今度コツ教えてね?」
総「それ反則でさぁ……いつでも教えやすよ。他ならぬ姉さんの頼みなんでねィ」
総悟は目をそらしながらそう言い稽古へ戻っていった。
小言をもう言われることはないが、寧ろここからが面倒だ。
なんせ、今の土方と稽古を共にするのだから。
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作者名:暇人の甘党 | 作成日時:2016年3月16日 16時