episode３４ ページ35
いつの間にか眠っていたらしい。
外を見ると、うっすらと空が明るくなってきている。さすがに部屋に戻ったかと、机の方を見ると、土方は畳の上で自分の腕を枕にして寝息をたてている。
まさか、ずっとここに居るとは。本当に何を考えているのか分からない。
さっさと起こして部屋に戻ってもらおうと近くに行くと、ふと机の上の書類が目にはいった。
それは、影を名乗る輩がまた辻斬りを行ったと言った内容だった。人数は二人。今までの合わせると、既に６人目になる。
この内の三人は私がした事だ。少しずつ証拠を集めて、バレないように慎重に行動した甲斐あって未だに見つかってもいない。しかし、残りの三人は全く知らない。
どこぞのバカが私へ挑発しているのか。はたまた、模倣犯なのか。
更に隣に置いてあるのは、誘拐事件の件だ。これは、影と全く無関係だが、用心に越したことはない。
黒幕が黒川だとわかった以上、いつこちらの正体に気付くか分かったものじゃない。なるべく、目立たずに過ごさなければ。ようやく掴んだチャンスなんだ。
粗方、者類を盗み見てから、何となく土方の顔を見る。いつもの眉間のシワは無くなっており、安らかな寝顔だ。
……見なければよかった。
ちょうど喉も渇いたし水を飲みに行こうとそそくさと襖を開ける。すると、後ろでうぅっと声が聞こえそっと振り向く。
土「…………」
どうやら寒かったらしく体を丸めていた。
あ「はぁ……」
自分の掛け布団をそっと土方にはかけて、私は廊下へと出た。
肌寒い廊下を歩いていると何故か近藤が縁側で座って居た。
あ「おはようございます。早いですね」
近「おぉ、おはようさん！目が覚めちまってな。体調悪いって聞いたけど大丈夫か？」
あ「土方さんが心配性なだけですよ。微熱であそこまで介抱されると思ってませんでした」
本当は熱などないのだが。
近「まぁまぁ。あいつも必死なんだよ」
あ「必死？何にですか？」
近「それは俺の口からは言えねぇよ。そのうち分かるさ」
意味ありげな言葉に首を傾げるしか出来なかった。
近「そういえば、トシはどうした？」
あ「私の部屋で疲れて眠っています」
近「そうかそうか！それなら良いんだ」
近藤は楽しそうに笑い立ち上がった。どうやら部屋に戻るらしい。それを合図に自分も水を飲みに行った。
あ「ふぅ……分かり合える、か。無理な話だ」
静まり返っている屯所に、私の言葉は吸い込まれるように消えていった。
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作者名：暇人の甘党 | 作成日時：2016年3月16日 16時
